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Channel: 弁護士の放課後 ほな行こか~(^o^)丿
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いい弁護士

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はや3月になってしまいました。

年度末、別れや旅立ちの季節でもあります。

 

我が家では、長女が小学校卒業を迎えることになり、あんなに小さくてふわふわしてかわいかった長女(いわさきちひろさんの描く子どものようにあどけなかったのです…。もちろん、今でも全然かわいらしいのです。)が、もう妻と同じくらいの背丈になって、袴を着て凛とした様子で卒業式に臨もうとしています。

お父ちゃんとして、娘の成長を眩く感じるとともに、なんとも言えない感慨を覚えております…などと、私的な感傷に浸りつつ、ブログの方を書かせていただきます。

 

今日は「いい弁護士」のお話を。

 

弁護士会の事件紹介窓口などで、「いい先生を紹介してほしい」「こういう案件に強い先生を紹介してほしい」という声をよく聞きます。それでふと、どういう弁護士が「いい弁護士」なのかなあと考えることがあるのです。

 

「いい弁護士」の評価基準というのはさまざまでしょうし、頭脳明晰な方、柔らかく折衝するのが上手い方、タフな交渉が得意な方、専門的な知識や経験を持った方、依頼者の心理的ケアに長けた方、裁判所に信頼のある方、熱心に事件に入り込んで突破するバイタリティのある方等々、優秀さ有能さを測るいろんな観点、いろんなものさしがあるように思います。

もちろん、能力値とかパラメータ的な面が高いに越したことはありませんが、そうした数値化できる要素がすべてではなく、自分の強み・特性をうまく使って事件に取り組み、依頼者と良好な関係を築き、依頼者にとっていい結果を引き出し、依頼者に喜んでいただくことができる弁護士は、「いい弁護士」ですし、皆そうなるように日々取り組んでいるのだと思います。

 

そういう総論的な結論を先に言いつつ、あえてフレーズ化を試みますと、最近個人的に思っているのは、この「いい弁護士」のジャンルに「弁護士に好かれる弁護士」というのも入れてみたいな、ということです。

 

事件をやっていて、すでに相手方に代理人弁護士がついていたり、こちらからお手紙を差し上げたことで相手方に代理人弁護士がついたりすることがあります。

 

ありがたいことに、私の経験としては、相手方代理人の弁護士さんの対応がよく、事件としては事実関係や主張をたたかわせることにはなっても、人間として、あるいは弁護士としてのコミュニケーションがきちんとでき、それぞれが依頼者の正当な利益のため、また、よい解決に向けて価値観の共有ができ、事件の進行中も朗らかに円滑にお話し合いができ、解決の際には相手方代理人の活動や対応に敬意と感謝を感じるようなケースが結構あるのです。

こういうときの相手の弁護士さんに対するファーストインパクトなり進行中の印象というのは、「この弁護士さん、なんか好っきゃなあ。ええ先生やなあ。」というものです。

そういう意味では、弁護士の信頼関係が結論にも大きく影響する、ということは言えるのかもしれません。

 

そういう弁護士さんに共通している特徴は、

・事実と感情を分けている(アサーティブ)

・相手の状況や立場に対する配慮がある

・言葉が率直かつ丁寧である

・(代理人としての)自己開示がある(本音で話せる)

ではないかと、分析しているところです(まだ分析は完了していませんが)。

 

そういえば私の師匠(出身事務所のボス)にインタビューさせていただいた際、弁護士の書く文章について

「文章は相手に伝えないといけないわけで、要件事実だけ書いて、相手の気持ちをえぐるような文章を書いてしまったら、ええことない。事案によってはきついこと書かないといけないけれども、相手が受け入れられるように、それは心がけてる。」(会派の広報誌「法友」129号「師弟」特集)

とおっしゃっていました。相手に対する配慮を心がける、という姿勢に感銘を受けたことを思い出します。

ボスは「私が最も尊敬し最も好きな弁護士」なのですが、間違いなく上記のような要素をもった「いい弁護士」です(余談失礼しました)。

 

こういう弁護士さんと事件をグリグリやって得られる解決というのは、あくまで感覚的な意味ですが、10対0とか5対5とかいう解決ではなく、7対7みたいな、双方にメリットのある解決になるのです。

 

ですから「弁護士に好かれる弁護士」というのは(相手の弁護士に評価される弁護士、能動的に見た場合は「相手といい関係が築ける弁護士」と言い換えることもできますね)、単に弁護士の社会に閉じられた自己満足的なものではなくて、ちゃんと依頼者に還元されていく強みだと思います。

 

ということで、弁護士の紹介を頼まれたときに困ったら、そういうタイプの弁護士さんを紹介していくとともに、私もどちらかというと優秀さの方で勝負できるタイプではないので、「弁護士に好かれる弁護士」を目指すことで「いい弁護士」となり、依頼者に喜んでいただけるように精進いたします(いかにも優等生的な終わり方・・こういうの、弁護士に嫌われがちです。。)。


桂歌丸師匠へのインタビュー

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大阪弁護士会広報委員会の活動の一環として,笑点でおなじみの桂歌丸師匠にインタビューをさせて頂きました。

 

桂歌丸師匠からは,笑点のこと,落語の未来,戦争体験者としての戦争に対する思い,弁護士に一言等,貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。大阪弁護士会のホームページにインタビュー記事がアップされておりますので,是非,ご一読ください(下記URLからも直接インタビュー記事が読めます。)。

http://www.osakaben.or.jp/matter/db/pdf/2017/oba_newsletter-188.pdf

 

ここからは,私が桂歌丸師匠にお会いして感じたことを少し書きたいと思います。

 

まず,桂歌丸師匠にお会いして,テレビでもお馴染みの心地よい話し方,チャーミングな笑顔は「本物だ!」と感動したのですが,それだけでなく,歌丸師匠の向上心や謙虚な態度には大変驚き,感動しました。一流の人というのは,こういうものなのかな,「実るほど頭を垂れる稲穂かな」というのは,こういうことなのかな,と深く考えさせられました。歌丸師匠の人柄は,インタビュー記事でも感じていただけると思います。

 

また,私が「私が中学生だった頃から,笑点での歌丸師匠の政治を斬るような回答の大ファンでした。」という話をしていたところ,歌丸師匠が政治を斬りすぎて,実際に政治家から一言嫌味を言われたエピソードも話してくださいました。その話については,歌丸師匠の格好よさが出ていますので,インタビュー記事で是非ご確認いただければと思います。

 

最近,脳科学者の茂木健一郎先生が,日本の芸人について「上下関係や空気を読んだ笑いに終止し、権力者に批評の目を向けた笑いは皆無」とツイートしたことについて,賛否両論が出ていました。私としては,少なくとも歌丸師匠は「権力者に批評の目を向けた笑い」をしてくれる芸人さんだと思っています。

 

桂歌丸師匠のとてつもない格好よさを感じられるインタビューだと思いますので,是非ご一読ください。

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稀によくある週末の過ごし方

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お久しぶりです。

弁護士の中林でございます。

 

さて、今日は、当職が週末に何をしているのかというところをお話ししたいと思います。

誰も興味ないと思いますけど、知ったことではありません。

そこに投稿スペースがあるから。

 

 

まぁ、何をしているかというと、だいたいはサッカースタジアムにいます。

だいたい長居。たまに地方。札幌とか。

要するに、セレッソ大阪というサッカーチームのゴール裏でサポーターをやっています。

 

2000年の長居の悲劇のシーズンからサポをやっているので、

そろそろ17年目ですか。途中醒めてた時期もありますけど。

それでも、昨年の昇格プレーオフは現地で見て、泣いていました。

久しぶりに勝負所で勝ったんだぜ。

キンチョウスタジアムは良いスタジアム!(日和見主義

 

アウェイの場合は、遠征にも行きます。

仕事柄、全国に知り合いが散在しているため、試合見に行ってるのか、

現地のヤツに紹介してもらった現地のうまいもの食いに行っているのか謎ですけども。

今年はJ1にあがったおかげで地方主要都市を回れるので、今からウヒウヒしております。

 

そんなこんなでセレッソサポーターをやっていると、気になることがありまして。

なぜか、大阪弁護士会の受付とかにはガ○バのカレンダーとかポスターだけ飾られてたりするんですよね。

これは、憲法13条とか20条とかムニャムニャ。

当職の密かな野望は、このカレンダーをセレッソとガン○の2種類にすること、あわよくばセレッソだけに・・・・

 

 

まぁ、そんなこんなで週末は仕事もそこそこに声を張り上げております。

サッカーの試合は面白いですよ。特にゴール裏は。

是非みなさまも長居(吹田でもいいですけども・・・)にいらっしゃってください。うたいましょう。

 

 

さて、本日はルヴァンカップ開幕です。

今から横浜FM戦。そろそろ見に行ってきます。

ではでは。

司法修習生

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2月末から、当事務所に司法修習生が来ています。

 

司法修習生とは、

 弁護士や検察官、裁判官になる前の段階で

 実務の知識や技術を学んでいる立場

と言えるでしょう。

 

実務家に付いて実際の実務を経験します。

弁護修習では、文字どおり弁護士に付いて歩きます。

 

司法修習生は、司法試験に合格していますが、

この後、約8ヶ月後に行われる

 司法修習生考試(いわゆる「二回試験」)

に合格して、

晴れて、実務家になる資格を得ます。

 

私自身、今年初めて司法修習生を受け持つ担当となりました。

まだまだ勝手が分からないところもあります。

また、かつて自分も同じ修習生という立場にあったはずですが、

 大阪修習ではなかったこと、

 当時とはスケジュールも変わっていること、

などもあり、戸惑うこともあります。

 

そうは言っても、はや1ヶ月経過。

 

依頼者の方のご都合もありますので、

司法修習生に何をどこまでを経験してもらえるかはありますが、

出来るだけありのままの弁護士の仕事を見てもらい、

少しでも充実した修習にできればと思っているところです。

備え

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3回目の投稿となりますが,今回は(主に大規模な災害への)「備え」について。

 

さて,皆様のご家庭や勤務先では,不幸にも大規模な災害が生じてしまった場合,誰がどのように行動するかを事前に決めていらっしゃるでしょうか。

また,災害によりそれまでの日常生活が(少なくとも一定期間)継続できない場合に備えて,食料等の必需品を蓄えておられますでしょうか。

 

振り返れば6年前に東日本大震災が,昨年には熊本地震が発生し,更に遡れば22年前には阪神・淡路大震災が発生しており,それらにとどまらず数多の災害が発生しています。

そうした災害が不幸にも発生してしまった場合,まずはご自身の安全を確保していただく必要がありますが,それが達成できたとして。

 

その時,皆様はどこにいらっしゃるでしょうか。

ご自宅でしょうか,勤務先でしょうか。

それとも,通勤中の電車内でしょうか,ご近所での買物中でしょうか,遠方の出張先や旅行先でしょうか。

 

その後,どのような行動をとられますでしょうか。

帰宅されるのでしょうか,いったん勤務先に戻られるのでしょうか,あるいは近くの避難所等に向かわれるでしょうか。

向かわれる先は,どのような状況なのでしょうか。

 

また,ご家族やご友人,知人や同僚の方々はご無事なのでしょうか。

そうした方々の安否は,どうやって確認できるのでしょうか。

携帯電話は使用できるのでしょうか,別の手段を用いなければならないのでしょうか,といって別の手段としてどのような手段があるのでしょうか。

 

 

大阪弁護士会には災害復興支援委員会があり,副委員長を務める私も被災された方や被災地の支援活動に微力ながら取り組んでおりますが,それは幸いにもそうした活動に取り組める状況にあるからであって,支援活動に取り組むはずの委員が被災してしまう可能性も否定できません。

その場合には逆に支援を必要とすることになるかも知れませんし,それにとどまらず,無理に帰宅をしようとすることで,更なる被害を生じてしまうおそれすらあるということに思い至りました。

例えば,多数の方が徒歩で一斉に帰宅しようとすることで歩道のみならず道路にも渋滞が発生し,救急車両の通行に支障が生じるというように。

 

自分は何時間でも歩けるよ,勤務先で1日くらい寝泊りすることになっても大丈夫だよ,必要なものは近くのコンビニ等で購入できるから備蓄が足りなくても何とかなるよ,と考えておられるとしたら。

私自身がそのように考えていたのですが,そうした考えは改めるべきではないかと思いました。

 

昨日,堺市で開催された「帰宅困難者セミナー」に参加させていただき,上記のような思いを抱きましたので,投稿させていただきます。

「備えあれば憂いなし」といいますし,一度,皆様のご家庭や勤務先での「備え」について,確認されてはいかがでしょうか。

 

必ずしも容易ではないとしても,①災害時の避難ルートの確認,②3日分程度の水や非常食の備置,そして,③業務上のデータの多重バックアップについては,すぐにでも取り組まないといけないと思いました。

皆様がそれぞれ「備え」をされることで,ご自身(のご家族や勤務先)の「備え」が達成されることはもちろんのこと,それにより近隣の方も含めた地域の「備え」にもなるのではないか。

 

昨日のセミナーに参加させていただき,そのように思った次第です。

少年事件 その後。

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頻繁に、ということではありませんが、少年事件を受任することがあります。保護観察で終わる子、少年院に行く子、様々ですが、一人だけ、少年院に行ってからも手紙のやりとりを続けている子がいます。

元々比較的しっかりとした子だったのですが、通数を重ねるごとに文章や考え方がしっかりしてきているのがはっきりと見て取れて、驚いています。

わずか2~3枚の便箋中にそれだけのことが感じられるのだから、きっと直に会って話をしたら、もっとあの子は大人になっているのだろうなぁ。

 

そんなこんなで、やっぱり可塑性ってあると思うのです。

 

厳罰化とかいろんな議論はありますが、個人的には子供の可能性や可塑性を信じた方向性に進めばいいなと思っています。

第30回大阪私学生徒指導連盟と大阪弁護士会子どもの権利委員会との協議会

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もう1ヶ月以上前のことになりますが、去る2月28日、「大阪私学生徒指導連盟と大阪弁護士会子どもの権利委員会との協議会」が開催されました。

 

大阪私学生徒指導連盟は、大阪府の私立の中学・高等学校の生徒指導に携わる先生方によって構成される、生徒指導に関する情報交換や研究に取り組んでおられる団体です。

私が所属する子どもの権利委員会(その中でも学校部会)では、大阪私学生徒指導連盟と年1回協議会を行っており、学校問題に関してそれぞれが行っている研究について発表し、意見交換を行っています。

その協議会が今回は記念すべき第30回ということで、例年と趣向を変え、この30年の歩みを振り返る講演と、生活指導上の事例に関するグループディスカッション・パネルディスカッションという形式で行われたのでした。

 

現在では、私学生徒指導連盟と子どもの権利委員会の関係は極めて良好で、教師と弁護士がざっくばらんに活発な意見交換をしているのですが、講演によると、協議会発足当初は、教師側と弁護士側の考え方の対立が鋭く、協議会のあとの懇親会は険悪な雰囲気で行われていたほどであったそうです。

ところが、平成9年に、私学生徒指導連盟と弁護士有志の会が共同で、日本たばこ産業株式会社に対してたばこの自動販売機の撤去や広告の禁止等を求める要望書を提出したことをきっかけに、互いの考え方に理解を深めるようになり、現在のような良好な関係の活発な協議会へ変わっていったということでした。

 

グループディスカッション・パネルディスカッションでは、教師と弁護士から、それぞれ違った視点からの意見が出されました。

このように異なる視点を持つ人たちが集まって意見を交換するということは、問題に対する理解を深め、より柔軟な解決を目指すためには、必要不可欠なのだとと感じます。

この協議会が対立関係から始まり、回を重ねて協調関係に至ったことがそのことを象徴しているように思いました。

 

近頃は、弁護士が学校問題についての相談を受けたり、いじめ事案についての第三者委員会委員として活動したりすることが多くなっています。

このような意見交換を通じて、学校問題に対する弁護士としての視野も広げて行かなければならないなと感じた次第です。

 

なお、かなり先の話ではありますが、子どもの権利委員会では、本年11月に、学校・教員と保護者との関係の在り方に関するシンポジウムを開催予定です。

学校の先生方との意見交換を通じて研究を深め、その結果を皆様にお披露目できればと考えております。

雨の日のリスク管理

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土曜の朝、少し都心を外れた駅に降り、目的地までタクシーで行こうと思った。車で5分。しかし、いつもは駅前のタクシー乗り場に2.3台の待機車がいるのに、この日は雨だからか、1台も止まっていない。幸い、乗り場に人もいなかったので、車が来れば1番だし、大丈夫と、傘をさして待っていた。

 

ところが10分経っても20分経っても車は来ない。約束の時間に遅れそうで、少し焦ってきたとき、駅の方向から50代の会社員風の男が来て、「私が先に待ってた」と怒気を含んだ声で偉そうに言う。

 

「待つべき乗り場はここでしょ」とかえすと「雨だろ。駅のひさしの下で待ってたんだ」と当然のように言う。「そんなのわかるわけない。理屈になってない」とやり取りする間も、スーツを着た企業の管理職風の恰幅の男性は、いらいらと腕時計をみている。たぶん、私の目的地と同じところに、同じ時間に行くのではないか、そうなら立場上、あまり品のない言動はできないぞと思ったところに、車が滑り込んできて、彼は当然のように先に乗り込んで去った。

 

幸い、その後まもなく次の車が来て、予定到着時間ぎりぎりに目的地に着くと、案の定、エレベーターホールにその男性らしき人がいて、私がホールに入ると、さっと目を背けて、同じエレベーターに乗らず1台遅らせた。

 

その後、暇な時間にタクシー乗り場の順番待ちの法的権利などに思いを巡らしたものの、考えてみれば、これは単にマナーの問題であって、違法性はないので、私が正しいと言い張っても仕方ない。しかし、この男性、きっと会社ではパワハラを炸裂しているんだろな。そんな顔だ。

 

で、この日はその後リスク管理の話を伺った。あらゆるリスクを想定し、それに対応できる準備が必要云々。

 

・・・ってことは、私も彼も雨の日の、しかも桜のシーズンのタクシー事情をきちんと把握せず、これだけの時間的余裕があれば大丈夫と安易に考えて行動していたわけで、リスク管理が全然できていなかったという点で、われわれは同類ってことかぁ。いやいや、あらゆる場が学びの場である。

 

でも、やっぱりタクシー乗り場から10ないし20メートル離れたところで待っていて「俺が先に待っていた」という理屈は普通理解できないと思う。

 


ウィンドミル(息子達との4年間)

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坂本優と申します

 

前回(2016年11月8日)のブログでは,子ども会ソフトボールの楽しさについて書かせていただきました。

 

今日は,そのとき言い足りなかったことを書きたいと思います。

 

 

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皆さん,野球をやっている子どもを見かけましたら,「どこのポジションを守りたい?」と聞いてみてください。どのポジションが人気だと思いますか?

 

正解は,ピッチャー!

 

・・・ではありません。私がいろいろ聞いてみたところ,「ピッチャー」と答える子はかなり少ないです。私の印象では,内野,とくに二遊間が人気です。

 

少し前なら中日のアライバ,ヤクルトの宮本,今なら巨人の坂本,広島の菊池,ヤクルトの山田哲人,そういった魅力的かつスーパーな選手がいますからね

 

憧れるのも分かります

 

ですが・・・ここは敢えて言いたい,ピッチャーをやってみよう,と

 

 

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個人的な話で恐縮ですが,うちの長男次男は二人とも,小学生のソフトボールチームでピッチャーでした

 

ソフトボールのピッチャーは,腕を一回転させて投げる「ウィンドミル」という投げ方でピッチングをします

 

極めて特殊な投法ですので,習得には根気が必要です。長男次男とともに4年間,個人練習に付き合ってきました

 

その経験を踏まえて,ピッチャーをお勧めする理由を申し上げます

 

子どもばかりでなく,お父さん(お母さん)も結構しんどいです。が,やりきれば,得るものが大きいです

 

 

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■個人的ではない,チームに対する責任感■

 

一番大きいのは,「責任感」というのがどういうことなのか,具体的に親子で経験できたことです

 

 

いまさら言うまでもないですが,野球の全ての始まりは,ピッチャーのピッチングから始まります

 

小学生のレベルであれば,ピッチャーがきちんとしていて初めて試合が「野球らしく」なります

 

ピッチャーが四球を連発しない

 

ワイルドピッチでランナーを無駄に進ませない

 

強打者相手に甘いコースに投げない

 

こうした前提が整って,はじめて野手の守備力が試合の勝敗を左右するようになります

 

ピッチャーの力量は,そのチームの「前提戦力」なんですよ

 

頻繁に大崩れするピッチャーは,エースとして認められないし,大事な試合を任せられることはありません

 

 

ですので,きちんとした試合の出来るチームのエースと呼ばれる子供達は,皆,かなりの練習を積んでいます

 

特に,ソフトボールのウィンドミルという特殊な投法の場合,才能だけでは絶対に無理です

 

 

試合で四球を連発して試合を台無しにしたりするなど,

 

血の気が全部引くような

 

四方八方から針で刺されているような

 

そんな「つらい経験」をしながらも,

 

ピッチャーを諦めずに練習を積んだ者だけが,「ちゃんとしたピッチャー」になれます

 

 

この「つらい経験に負けずに,ピッチャーを諦めない気持ち」というのは,最初は「悔しさ」とか「活躍したい」という個人的な理由からなんでしょうけれども

 

チームとして複数の試合を経験していくにつれ,「チームが負けるのは嫌だ」という気持ちに由来するようになります

 

これが,ピッチャーの責任感であると思います

 

 

 

でもって,小学生ピッチャーの個人練習というのはどういうものかというと,父親(母親)と朝練していることがかなり多いと思います

 

 

というのも,なかなかキャッチングに付き合ってくれる友達も少ない(構えたとこに投げてこないので,キャッチングが結構しんどい)ので,必然,練習量を増やそうとすると,親が付き合うことが多くなります

 

親が付き合えるのは,ほとんどの場合,早朝だけです

 

朝練って子どももきついですが,付き合う親もきついです

 

ですが,親子で一緒のコトが出来るのって,小学生のときぐらいと思います

 

 

そうした「きついこと」を毎日続けられるのは,先ほど述べた個人的理由も少しはあると思いますが,

 

危機感をもって必死になる動機は,先ほど述べた「チームが負けるのは嫌だ」という気持ちだと思います

 

 

 

こういう,小学生ピッチャーの気持ち(責任感)ってどうやったら身につくのか,親に何かできることはないか,と考えてみると

 

ヤルと決めた以上は,どんなに前の日に仕事や付き合いでしんどくても,バシっと起きて朝練に付き合うこと

 

そういった親の支えというか,姿勢ですかね

どんなに前の日忙しかったり付き合いで遅くなっても,仕事に穴はあけませんよね。それが「責任感」

 

子どもがエースになりたくて「朝練しよう」といっているのであれば,それに付き合う親もそれに穴を空けないこと

 

そんな親の姿が,子どもの責任感を醸成すると思います

 

説教くさくなってしまいましたが,これが実感です

 

というのは,

 

「今日はお父さんしんどいから朝練やめよう」といったときの息子の落胆ぶりと,

 

「やっぱ朝練行こう」といったときの息子の嬉しそうな顔,両方見せ付けられてきましたので

 

そうやっていったりきたりしながら,4年間息子たちの朝練に付き合ってきました

 

 

 

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■買ってでも経験させたい緊張感■

 

もうひとつは,「極度の緊張にさらされる場」に臨む経験ができること

 

 

 

息子たちのチームは,夏に行われる市の大会で優勝することを目標にしています

 

その予選となる区大会,そして市大会のいずれもトーナメント方式です

 

市でトップになるには,区で3試合,市で4~5試合勝ち続ける必要がありますが,途中で負けたら,6年生はほぼ引退です

 

負けた瞬間,次年度のために5年生以下がメインになるからです

 

 

 

高校野球ほどではありませんが,「負けたら引退」のかかった試合でのプレッシャーはすごく大きい

 

自分だけが引退するんじゃないんです

 

何年も一緒に野球をやってきた同級生全員の「引退」がかかっているのです

 

 

 

全ての試合が緊張の連続ですが,特に緊張度が高まるシチュエーションがあります

 

例えば,同点最終回裏,2アウト満塁の3ボール2ストライク

 

ボールを投げたらその瞬間,チームが負けて引退

 

甘い球を投げてヒットを打たれたその瞬間,チームが負けて引退

 

 

そんなシチュエーション・・・滅多にないと思っている方,そんなことはありません

 

ズバリはなくともそれに近いシチュエーション,結構あるんですよ

 

例えば,最終回裏,同点でランナー3塁,というだけで,とんでもないプレッシャーです

 

ワイルドピッチやパスボール,これで負け

 

顔が引きつり,手が震えると思います

 

責任感を感じていればいるほど,緊張の度合いは増していきます

 

 

 

「何年もやってきたことが,その日数時間に集約される」という意味では,受験に似ていると思います

 

 

 

この間のセンバツでもワイルドピッチで点を取られているシーン多かったですよね

 

かといって,ワイルドピッチをおそれて高めにボールが浮けば,タイムリーを打たれる可能性が高くなります

 

そういうプレッシャーを目の前にして,力を出し切ることが求められます

 

親だったら,子にそういう経験,買ってでもさせたいですよね

 

 

 

 

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■ピッチャーはチームの「顔」■

 

そして,最後に,なんといってもピッチャーは「目立つ」「格好いい」

 

 

 

私は,息子たちの「アウトロー」あるいは「インコース」にズバッと投げ込んでの三振!

 

そして,そのときの(小さい)ガッツポーズ

 

これを見たくてたまらない

 

 

 

また,見たいかといえばちょっと微妙ではありますが

 

大事な試合で,ホームランを打たれたときの「うなだれた姿」も,またいいもんです

 

とことん練習を積んだからこそ,凄いヤツに打たれてうなだれる姿も絵になります

 

それを元気付けるチームメイト(息子の友達)の有難さも身にしみます

 

打たれた後の次の一球が,これまた気合の入ったアウトローだったときなんて,本当に痺れます

 

 

 

なんていうんですかね

 

親なら誰しも,子どもが必死に何かに取り組んでいる姿を見たいですよね

 

ピッチャーは,それを分かりやすく観ることの出来る役割といいますか

 

 

 

そういう気持ちで見ると,他のチームの頑張っているエースの子も応援したくなります

 

ああ,あの子も息子と同じように,息子よりもっと頑張ってきたんだな

 

そんな気になります

 

 

野球の試合は,マウンドのピッチャーを,自チーム,相手チーム,審判,運営,応援している人,全てが注視します

 

たとえ小学生であっても,マウンドでの立ち居振る舞いに「貫禄」さえ出てくる子もいます

 

 

この4年間の息子たちの対戦相手のピッチャーには,いろんな「凄いヤツ」がいました

 

市大会準決勝タイブレークというシチュエーションで,相手の主力バッターに,4連続チェンジアップを投げ続けて打ち取った,自分を信じる勇気のある小学生

 

終始感情をあらわにせず,アウトローに淡々と投げ込むクールな小学生

 

ピッチャー返しをまともに食らっても投げ続け,しかしながら負けてしまい,悔し泣きする小学生

 

そんなに体も大きくないのに,一球一球体全部を使って,観衆全員にため息をつかせるほどの剛速球を投げる小学生

 

そんな貫禄を醸し出すまでに,どんだけ練習を積んできたのだろうか,と尊敬すらします

 

 

うちの息子達はこれほどスーパーではなかったですけれども

 

私は,市大会最後の試合でのマウンドの息子たちの立ち居振る舞いをよく覚えています

印象的なのは,「ピンチに臨んで,深く深呼吸してモーションに入る姿」

 

必死にプレッシャーと戦っている息子の姿に

 

心の底から「頑張れ!」といいたくなる

 

そんな試合を見せてくれる息子たち,チームメイト,監督コーチ,大会運営者,そして手ごわい相手チームの子供達

 

ありがたいと思います

 

 

 

以上です。最後までお読みいただき,ありがとうございました

『憲法24条を知っていますか?』

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『憲法24条を知っていますか?』

 

「憲法9条は知っているけど、24条なんて知らない。」と思った、そこのあなた!
そんなあなたにピッタリの企画を大阪弁護士会がご用意いたしました。

 

「あなたらしく。わたしらしく。~憲法24条から見えてくる様々な家族のかたち」です。

憲法24条は、家族関係における個人の尊厳と両性の平等を定めたものです。

 

憲法24条は、両性の合意のみによって婚姻が成立すると定めていますが、憲法24条ができるまでの明治民法のもとでは、戸主の同意がなければ婚姻することはできませんでした。

 

また、妻は「無能力者」とされ、夫の同意がなければ法律上の行為をすることができませんでした。親権者となるのも父親でした。

 

今、私たちがあたりまえのことと思っている様々なことが、憲法24条なくしては現実のものとはならなかったのです。

 

あまり知られていないけれども、憲法24条はとても重要な条文なのです。

個人の尊厳と両性の本質的平等を大切にする憲法24条。
個人の多様な生き方を尊重しようとする憲法24条の意義を、今あらためて皆さんと一緒に考えたいと思います。

是非ともご参加ください。

 

 

日 時:5月13日(土)午後1時~午後4時
会 場:大阪弁護士会館 2階ホール

 

    (大阪市北区西天満1-12-5)

申込方法:下のフォームからお申込みいただくか、チラシを印刷して所定事項を記入しFAXにてお申込みください。

 

<申込みフォーム>
https://www.osakaben.or.jp/web/entry/form.php…

<大阪弁護士会ホームぺージ>
http://www.osakaben.or.jp/event/2017/2017_0513.php

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日頃の心がけ

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不肖ワタクシ、弁護士になって15年ちょっとが経ちましたが、特に最近は月日の過ぎるのが本当に早く感じます。今年だって、お正月なんてついこの間だと思っていたら、もうすぐゴールデンウィークじゃないですか。ウカウカしていると1年なんてあっという間ですね。そして、とうとう年齢も40代の後半にさしかかりました。

 

ワタクシも常に人には優しくありたい、と思っていますが、そろそろ優しくされるほうに近づいてきたのかな、とも思います。自分ではまだまだ若いつもりですが・・・。

 

ワタクシ、こう見えても電車の中でお年寄りや妊婦の方が近くに立たれたら、なるべく席をお譲りするようにしております。

 

ただ難しいのが、思いやりが過ぎて、お譲りすることが却って失礼にあたらないか、という深謀遠慮が働いてしまいがちなところです。

 

この前、ワタクシより15年ほど先輩の弁護士が、初めて電車で席を譲られショックだったというお話をされていたのですが、その方をよく存じ上げている身からすればまだまだ席を譲られるような年齢ではないですし、ご自身もそう思っておられるのでしょうから、そりゃ確かにそうだろうなと思いました。

そこで、席を譲った方がよさそうだけど声をかけるのはためらわれる、というシチュエーションに出くわしたときは、できるだけ自然な感じに、駅に停車したタイミングでそそくさと席を立ったりするようにしています。

 

ただ、そうすると横から関係ない若者がすかさず座ってしまって所期の目的を達成できなかったりすることもあったりして、そんなときは何を一人で悩みながら通勤しているのだろう、と思ってしまったりもします。

 

また、ワタクシが車を運転しているときに心がけているのは、「横断歩道では歩行者を優先する」ことです。

 

車を運転される方ならどこかで教わったはずなのですが、横断歩道を横断しようとしている歩行者があるときは、その横断歩道の前で一時停止しなければなりません。これは道路交通法第38条第1項後段に明記されており、違反すると罰則も適用されちゃいます。

 

それなのに、横断歩道を渡ろうとしている人を見ても、多数のドライバーが止まることなく通過しているのが現状かと思います。中には横断歩道を渡ろうとする歩行者にクラクションを鳴らす人までいる始末です。

 

そこで、ワタクシとしては横断歩道を渡ろうとする歩行者を見かけたら、きちんと一時停止するようにしています。傍からは、弁護士だから法律は守るんだ、とか、弁護士は真面目なんだと思われているようなのですが、人に優しくすることに職業は関係ないと思います。

 

ただ、この場合もジレンマがありまして、例えば自分は一時停止をしようとしていても、対向車がブンブン走り過ぎているような場合には、自分が止まっても歩行者は渡れず、横断を促すことが却って危険だったりするので、そのような場合には臨機応変にせざるを得ません。

 

また、一時停止をしても横断歩道を渡らない方がたまにいて、渡るよう促しても渡らないないので、単に立ち止まっていただけと判断して発車しようとすると今度は急に渡りだしたりと、油断ならない(?)方もたまにいらっしゃいますね。

 

以前に、高速道路への進入路を横切る横断歩道を自転車が通過しようとしていたので、私はいつものように一時停止したのですが、その横を強引に追い越そうとした後続車が自転車に気づいて急ブレーキをかけ、間一髪衝突を免れたことがありました。

その後続車のドライバー、自転車が通過した後、横並びになった私のほうを見て、「どうぞ。」と会釈して私を先に行かせましたが、相当気まずかったと思います。

ただ、このように、ルールが浸透していないと、ルールを守ることで、かえって危険を生じさせることもありますので、横断歩道の交通ルール(というか交通法規)は、もっともっと警察や行政が周知させてほしいと思っています。

 

いずれにせよ、人に優しく接することで、感謝されたり場が和んだりすることは、ちょっとしたことでも気持ちのいいものです。一人一人がちょっとしたことを心がけるだけで、きっと社会は変わると思い、ワタクシ、ジレンマと日々闘っております。

4月14日に、民法の改正法案が衆議院で可決されました。

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 ブログをご覧の皆様、弁護士の丹羽一裕と申します。

 

 4月14日に、民法の改正法案が衆議院で可決されました。

 おそらく、今国会で成立することになるでしょう。

 

 では何が変わるのでしょうか。

 

 

 まずは、今の民法の沿革から見てみましょう。

 今の民法が施行されたのは、明治31年、今から120年ほど前のことです。

 大変読みづらいものであったため、平成17年には現代語化されました。

 しかし、その後も大幅な改正は行われることはありませんでした。

 この間、法律の文言だけでは白黒つけられないものについて、たくさんの判例が出されることになりました。

 

 そのため、判例を知らなければ、法律を見てもさっぱりわからないことがたくさんあります。法律の文言を読んだだけでは、法的な取扱いがどうなるか、わかりません。一般の方々にはとても分かりにくいのです。

 さらに、明治時代の法律であるため、社会の変化についていくことができていない部分も多数生まれてきました。

 

 そこで、平成20年ころから、一般市民の方々にわかりやすいものにすること、社会の変化に対応すること、を目的として、民法、特に現代では日常生活にも大きくかかわってきた「契約」などについて、改正することが検討されるようになりました。

 

 では、どのあたりが変わるのでしょうか?

 

 みなさまにとっても身近な言葉ですよね、まず、「保証」契約が大きく変わります。

 例えば家賃の保証人などについて、責任の限度を、契約書で明確に定めなければならないようになります。これによって、想定外の責任を負うことがないようになります。

 また、事業資金について保証人になった場合には、借金が大変高額なものになることも多いので、経営状態についていろいろな情報を得ることができるようになります。

 ほかにもありますが、このように、保証人を守る方向に法律が変わります。

 

 「時効」も大きく変わります。

 まず「時効の中断」「時効の停止」という大変わかりにくかった言葉が、「時効の更新」「時効の完成猶予」といった比較的わかりやすい言葉に代わります。

 また、多くの時効が10年であったところから、5年に短縮されます。

 他方で、生命身体への不法行為(傷害事件や人身事故の損害賠償請求など)の時効期間が、3年から5年へ延長されます。被害者の救済につながることになります。

 

 「法定利率」も変わります。

 これまで年5パーセントだったものが、年3パーセントになります。

 自分には関係ない、と思うのは早合点です。

 例えば交通事故で後遺症を負ったとします。

 後遺症のため仕事ができなくなった場合でも、損害賠償金は、一括で支払われます。

 将来得ることができるはずだった給料についても一括で支払われるのです。

 このため、大まかにいえば、将来の分については「年5パーセント」分が減額されてしまうのです。

 この「年5パーセント」の減額が「年3パーセント」になれば、それだけ支払われる賠償金が大きくなるわけです。

 

 

 ここで上げた以外にも、様々な事柄について改正がなされます。

 みなさまにとっても大きな改正ですが、法律家にとっても大きな改正です。

 法律家もきちんと勉強していかなくてはならないと、改めて思う次第です。

小学生向けの法教育イベント

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私は法教育委員会に所属しています。

このブログでは法教育のことについてばかり書いていますが、他の仕事をしていないわけではないです。

 

題材としても、活動紹介の点からしても、非常に書きやすいのです。

ようするに引き出しが少ないのです。

すみません。

 

さて、私は、出張授業に行ったり、各イベントに参加したりします。

最近では、小学生向けのイベント「ほうりつのがっこう2017」に参加しました。

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小学生向けの法教育というと、ちょっと早いのではないかと感じられる方もいるかもしれません。

そもそも、法教育というと小難しい感じがする方もいるかもしれません。

 

しかし、そうではありません。

法教育には、ルールについて考えてもらったり、相手と話し合ったりということが含まれます。

 

もちろん、年代によって、どのくらいの言葉を知っているか、どのくらいの集中力が持つかというような違いはあります。

それは、どのような教材を用意するかの問題で、法教育の実施には問題はありません。

 

たとえば、今回、小学生向けのイベントで行ったのは「リスの村のどんぐり分け」という内容です。

 

簡単に内容を紹介すると

「リスの村にはいろいろなリスがいる。

年寄りリス、働きリス、病気リス。

どんぐりを拾ったからみんなで分けたい。

ところが、どんぐりを拾った数に違いがあるし、みんなの意見を聞くと、どんぐりが足りない。

どうやって、どんぐりを分けたらよいか。」

というものです。

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この内容には、考えることとしてはいろいろなことが含まれています。

ですが、何も今まで考えてもみなかったことを考えてもらうというのではないのです。

もちろん、考えなければならないので、簡単ではないのですが、難しいということもないと思います。

実際に、イベントでは参加者は一生懸命に考えて、話し合いができていました。

イベント後のアンケート結果も良好で、うれしい限りです。

 

法教育はいろいろな年代で行われています。

 

それぞれの年代にあってさえいれば、むずかしいこともなければ、早すぎるということもないのです。

事例と対話で学ぶ「いじめ」の法的対応

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今年1月11日のブログで「書籍が出版されます」と宣伝しましたが、この3月、無事に出版されました。

執筆・編集期間約2年。

 

タイトルは、

「事例と対話で学ぶ『いじめ』の法的対応」(エイデル研究所 発行)です。

子どもの権利委員会の中でも、いじめ調査の第三者委員会やいじめの対応に興味のある弁護士が有志として「いじめ問題研究会」を作って集まり、執筆したものです。

 

せっかくですので、内容をご紹介させて頂きます。

 

本書は、平成25年6月に成立した「いじめ防止対策推進法」と、

同法に基づく「いじめ」へのあるべき対応を、法的に解説するものです。

 

1つめの特徴は「逐条解説ではない」です。

重要と思われる条文を取り上げ、基本的な解説を行っています。

教師、校長、保護者など、子どもに関わる様々な立場から出される質問に回答・解説を行う体裁になっています。

 

2つめの特徴は「事例検討を中心にしている」です。

執筆者が過去経験した事例をもとに(当然、実際の事案から改変しています。)、その事例でどのように対応するかを実践的に学んで頂けます。

 

3つめ、そして最大の特徴は、「対話で学ぶ」です。

保護者から相談を受ける立場(P弁護士)、

学校(教育委員会)から相談を受ける立場(T弁護士)、

子どもの権利を中心に調整して意見を述べる立場(C教授)、

三者の立場から対話形式で検討を加えています。

 

議論を分かりやすくするため、

少し誇張した表現もあるかもしれませんが、

学校関係者のみならず、

いじめに悩んでおられる保護者・子どもの立場からも、参考にして頂ける内容です。

保護者の立場であれば、P弁護士を中心に、

学校や教育委員会の立場であれば、T弁護士を中心に、

内容を読んで頂くと、短時間で内容を把握することも可能ではないでしょうか。

P弁護士、T弁護士、C教授によるディスカッションも含まれており、実務での最新の問題意識も学んで頂けます。

 

最後に、いじめ防止対策推進法施行3年後の見直しに向けた、弁護士からの提言を記載していることも特徴の1つです。

いじめ防止対策推進法は、被害者となる子どもを中心に据えた点で、その意義は大きいものです。

しかし、一方で、「いじめ」という非常に難しい事態への対応として、まだまだ検討すべきところも見受けられるように感じられます。

そのような点を、実務家の立場で指摘させて頂きました。

 

内容はそれなりのレベルと自負しておりますが、

180頁強とコンパクトにまとめております。

 

今後、教育現場や保護者、子どもたち、多くの方々に読んで頂ければ、執筆者一同、これほど嬉しいことはありません。

既に国の基本方針の見直しは3月に発表されましたが、今後も、法律の見直しの参考になれば、と思います。

 

現在、子どもの権利委員会では、

いじめ問題に止まらず、さらに広く、学校と保護者との関係のあり方にまで議論が展開しており、

この秋にシンポジウムが実施される予定です。

また、一部の有志では「いじめ」に関する出張授業も行っています(これも、できれば、さらに拡大させていきたいです)。

 

本書が気になられた方は、

Amazonや楽天ブックスでも取り扱いのあるほか、

お近くの書店等でもご注文下さい。

http://www.eidell.co.jp/book/?p=5186

 

成人の年齢は下げるべき?

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「民法」という法律があります。
契約、損害賠償、相続、結婚や離婚といった、私たちの生活の基盤になっているルールです。

この民法がいま変わろうとしています。

大きく、契約など債権に関するルールの改正、結婚や相続など家族に関するルールの改正が予定されていますが、もう一つ、20歳から成年(成人)になりますが、それを引き下げて18歳から成年(成人)としようという動きがあります。

 

大阪弁護士会では、3月30日にこの成年年齢の引き下げに関して意見書を公表しました。

http://www.osakaben.or.jp/speak/view.php?id=147

http://www.osakaben.or.jp/speak/db/pdf/2017/oba_spk-147.pdf

 

詳細は意見書に譲りますが、是非このブログを読んでおられる皆様にも一度、成年年齢を引き下げるか否かを考えていただきたいと思います。

 

問題意識としては、

 

①いままで20歳未満であれば「未成年者取消権」で守られていた部分が、成年年齢が18歳になることで、18歳・19歳は守られなくなる。

 

②未成年者が親権者の同意を得て労働契約を締結した場合でも、その契約が未成年者に不利であると認められるときには親権者、後見人または行政官庁がその契約を将来に向かって解除できるという規定であるが、成年年齢が引下げられると、保護される年少者の範囲が狭められてしまうことになる。

 

③親権者の範囲に変更がある。

 

④養育費等の支払い終期が繰上げになる可能性がある。

 

などなどがあります。

大阪弁護士会の意見書にもあるとおり「成年年齢の引下げは、国民に情報が周知され、議論が尽くされ、理解が得られてから行うべき」であると考えていますが、成年年齢の引き下げについて情報の周知がされているのか、議論が尽くされているのか、国民からの理解が得られているのか、このあたりは読者の皆様はどのような感想をお持ちでしょうか。

成年年齢引下げも私たちの生活に大きくかかわってきます。

外国がこうだから引き下げよう、選挙年齢が引き下げられたから成年年齢も引き下げよう、というのではなく、引下げによるメリット・デメリットを主体的に考えてただいて、自分なりのお考えを持っていただければと思います。

 

 

 


ご挨拶-震災と「鉄」-

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 5月1日に大阪弁護士会の広報室長に就任しました。よろしくお願いします。弁護士や弁護士会の「よさ」を皆さんにお伝えしていきたいと思います。

 

 少し自己紹介をしますと,私は平成元年から弁護士をしています。城,鉄道,高校野球,パズル・クイズなどが好きです。城は,日本百名城の判を99まで集め,来月に「あがり」の予定です。鉄道はいわゆる乗り鉄で,こちらも私鉄も含めた完乗の一歩手前です。その他は割愛します。ちょっと痛い奴であることは,自分が最もよくわかっています。

 

 九州の中では南阿蘇鉄道(立野-高森間)にだけまだ乗っていません。最後の楽しみにとってあったのですが,昨年の2度にわたる大地震で大きな被害を受けたこの鉄道は,現在,一部区間で運休中であり,復旧時期は不明です。日本で一番長い駅名の「南阿蘇水の生まれる里白水高原」駅にも行くことができません。ただ,被災地について知るためのとある企画で熊本に行った4月29日,1人だけ少し早く熊本に行き,現在走っている高森駅から中松駅までに乗って来ました。

 

 時間の都合でトロッコ列車には乗ることができませんでしたが,「漫画よせがきトレイン」に乗りました。子供さんと,中国からの観光の方で満員でした。菜の花や外輪山の景色に心が癒されます。復興を願い,15000円支払って,枕木プレートを寄付しました。枕木に自分の名前が載るというのは,とても楽しみです。

 

 温暖化の影響もあって災害が激しくなった一方,地方の力が弱くなったためか,被災した鉄道がなかなか復旧できないという事態が国内で増えています。只見線は6年前の災害からいまだ復旧していません。大井川鐡道は,3年弱を経てくしくも去る3月11日にようやく全通しました。一方,岩手県の岩泉線,そしてこの高森線と繋ぐことが計画されていた高千穂鉄道(宮崎県)などは,災害から復旧できず,廃止されました。地方の鉄道に乗ると,「地元に鉄道があることの素晴らしさ」を実感します。東日本大震災から「復旧」した仙石東北ラインに乗ったときには,特にそれを実感しました。

 

 約1年前,私はこの「ほないこか」に,熊本等の震災による被災者の方に役に立つ法律情報をいくつか提供しました。その後,私自身も,毎週のように電話での法律相談をさせていただきました。被災者の方の役に立っているのか,自信がありませんでしたし,特に被災地を知らないまま電話だけでお答えしていることに,これでよいのかという気持ちを持っていました。今回も,ほんのわずかしか被災地を知ることはできませんでしたが,現地を訪れたことで,引き続き少しでも被災地の復興に役に立っていこうという気持ちを強くしました。

 

 今年度の大阪弁護士会執行部のスローガンは,「世話やき宣言」です。昨年度の被災地からの電話法律相談なども,そのひとつだったかもしれません。どんな「世話やき」ができるか,広報室長として考えていきたいと思います。

音楽鑑賞

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 先日,神戸朝日ホールで開催された「青柳晋ピアノ・リサイタル」に行ってきた。

 

とはいえ,私自身,普段から音楽を嗜んでいる訳ではなく,河合楽器の株主優待でコンサートの招待券をゲットしたので,たまには文化的な趣味の世界を楽しんでみようと思い立ってのことである(招待券がペア券としても利用できるためか、受付では「お一人ですか?」とまるでデートをドタキャンされた可哀そうな男を見るような感じで対応されてしまったのは気のせいということにしておこう)。

 

 弁護士のブログらしい話をしておくと,プログラムはオール・ショパンだったので,(ショパンの死後50年以上経っているため)作曲家の著作権の保護期間は経過しているが,演奏者(実演家)には著作隣接権という権利があるので,演奏中に録音・録画をすると演奏者の権利を侵害することになってしまう。私的使用目的の録音・録画であれば著作隣接権の侵害は回避できるが,コンサート主催者との契約で禁止されていると考えるべきだろう(開場前には写真・ビデオ等の撮影は遠慮するようアナウンスがあった)。

 

クラシックの素養がないため,途中から,今どの曲を演奏しているのか分からなくなった(拍手するタイミングすら分からない)のには困ったが,最初と最後の曲だけは私ですら聴いたことのあるものだった。

 

最後の曲はアンコールのもの(プログラムに記載なし)であったが,閉演となった後,前を歩いていた2人連れの女性が「(最後の曲は)これを聴いたら帰れってことよね」等と話していたのを「???」と思いながら聞いていると,会場の出口にアンコール曲の名前が書いてあって,なるほどと感心して帰路につきました。

 

ショパンの作品をある程度知っている人なら分かりますよね!

事前復興計画

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皆様は「事前復興計画」という言葉をご存知ですか。

 

法律上の用語ではありませんが、これは、大規模な震災の発生を想定して、万が一震災が発生した後に、どのような形で被災地を復興するかを、事前に自治体や住民が話し合って青写真を決めておこう、というものです。

 

特に昨今、関西では、南海トラフ地震を想定して、事前復興計画に取り組んでいる自治体があります。特に和歌山県は、県をあげて、県内の沿岸19市町村と連携して、事前復興計画の策定に乗り出しているとのことです。

 

事前復興計画の必要性は、東日本大震災において、如実に明らかになりました。被災した沿岸部に、まったく海を見ることができない、巨大な防潮堤が、住民の意見を殆ど反映しないまま、次々と出来上がってしまったのです。私も現地に視察に行きましたが、本当に住民の方がこのような防潮堤を望んだのだろうか?ということについては疑問無しとしませんでした。震災時に働く行政の力学、殊に予算取りを鑑みると、致し方ない面もあるのかもしれませんし、現場で働く公務員の皆さんは勿論必死で復興に当たっておられることと思います。しかし、上記の防潮堤問題を考えると、やはり、冷静なときに、復興の姿を思い描いておくことは必要だと考えます。

 

このような問題意識も持ちながら、来る2017年7月29日(土)に、事前復興計画を主たるテーマとして、和歌山市内で、近畿弁護士連合会公害対策・環境保全委員会の夏期研修会が開催される予定です(大阪弁護士会の公害対策・環境保全委員会自然保護部会も参加しております)。未だ詳細は未定ですが、どなたでも参加できますので、ご興味のある方は是非ご連絡を頂ければと思います。

 

海事補佐人というお仕事

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みなさま、こんにちは!

本年度のブロガーの一人を務めさせていただきます、

グリーン法律会計事務所の小西裕太と申します。

よろしくお願い致します。

 

ここ最近は、ブロガーの初仕事としてどんなお話をチョイスしようかなと毎日考えていました。

法律の話、家庭の話、趣味の話……いろいろ候補があるのですが、

本日は、私の専門分野(になる予定)について少しお話しようかと思います。

 

みなさまは、海事補佐人という資格をご存知でしょうか?

船舶を運行して不幸にも海難事故が発生してしまった場合、

当該海難事故に対する行政上の責任の有無が審理される「海難審判」というものが開かれます。

イメージとしては刑事裁判みたいなものを想像していただけるとわかりやすいかと思います。

海事補佐人とは、海難審判において海難事故を起こしてしまった人(「受審人」「指定海難関係人」といいます。)を代理して、主張や証拠の提出を行ったり、審判手続を行ったりする資格です。

イメージとしては、刑事弁護人みたいな感じですね。

弁護士であれば海事補佐人として登録することができます。

 

私自身前々から海事補佐人についてリサーチを重ねていました。

しかし、海事補佐人の登録者数自体が全国的にも少ないこともあって、リサーチは大変難航していました。

そんな折、たまたま私が所属する会派で海事補佐人の話をしたところ、

興味を持っていただいた先生から、ありがたいことに、海事補佐人としてご活躍されている神戸の先生をご紹介いただき、事務所へ訪問させていただけることになりました。

ご縁というのはすごいところで繋がるものですね。

 

事務所へはちょうど一週間後の6月20日(火)に伺わせていただけることになり、現在、わくわくしながら直接に聞いてみたいことなどをリストアップ中です。

海事補佐人となって良かったこと、大変だったこと、思い入れのある事件などなど…時間の許す限り、しっかりお話を拝聴してこようかと思っています。

 

可能であれば、事務所訪問時のお話なども続編としてこのブログでご報告できればなと思います。

 

 

前頭側頭型認知症と改正消費者契約法

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 前頭側頭型認知症は,読んで字のごとく,前頭葉症状又は側頭葉症状を主徴とする認知症で,「原発性変性性痴呆例のうち,前頭葉症状を主徴とする非Alzheimer型変性性痴呆疾患の総称」(かつて「前頭葉型痴呆」と呼ばれた頃の定義で,鉾石和彦・池田学・田邉敬貴「前頭葉型痴呆の臨床」神経研究の進歩49巻4号627頁)です。
 前頭葉とくに「前頭前野は解剖学的に背外側面,眼窩面,内側面に分かれ」(安藤功一・植村健吾「性格が変わりました」medicina46巻2号309頁)ていて,それぞれが限局的に損傷することによって生じる症状には特徴があり,背外側面の損傷は「物事に集中できないなどの注意障害,計画を立て,順序良く実行できないなどの遂行機能障害,working memoryの低下,保続,自発性の低下」など,眼窩面の損傷は「脱抑制,衝動的行動,場面に不適切な行動」,内側面の損傷は「発動性低下,意欲低下,周囲への無関心,無感動」などの症状を生じさせるようです(同上)。これらの症状は,「行動プログラムの選択・発現・制御に関わっている」(新田統昭・船橋新太郎「行動の制御と前頭葉」神経研究の進歩49巻4号555頁)前頭前野が損傷することでこれらの機能に障害が生じる点で共通していますが,しかし,同時に,これらの精神症状・行動異常の「多彩さが初期診断を困難にしている可能性」(上記「前頭葉型痴呆の臨床」)があり,実際には前頭側頭型認知症を発症しているにもかかわらず,見逃されている方が多数いる可能性があります。

 

 この「前頭側頭型認知症」という言葉を私が初めて耳にしたのは刑事事件に関する新聞記事で,記事は概要,「万引きで罪に問われた人が,認知症を発症していると診断されるケースが増えている。『前頭側頭型認知症』と呼ばれ,衝動的に行動してしまうのが特徴の一つだ」(朝日新聞記事)というものでした。しかし,考えてみると,前頭側頭型認知症は万引きのような刑事事件だけではなく,消費者被害,たとえば,脱抑制や衝動的行動によって大量の商品を一度又は次々に購入してしまうなどの被害の原因となっている可能性があります。

 

 このような消費者被害に対して,平成28年改正消費者契約法4条4項が今月3日に施行され,過量な商品の購入契約を取り消することができるようになりました。これは,被害に遭われた消費者の方にとって大きな進歩で,これまで,このような被害を回復するためには,特定商取引法や割賦販売法の適用がない限り,公序良俗違反(民法90条)とか「不法行為」(同709条)といった抽象的な,悪く言えばフワッとしたものを立証しなければなりませんでしたが,これからは,「通常の分量等を著しく超えるものであること」が立証のゴールの一つとなり,少しは具体的でわかりやすいものになりました。
 そして,最も大きな進歩は,立証に当たって医療機関のカルテや診断書などが不要になる可能性がある点です。
 これまで,抽象的な公序良俗違反や不法行為の存在を立証する場合で,被害に遭われた方が前頭側頭型認知症を発症していたようなときには,大半のケースで,客観的な購入取引に関する事情に加えて,主観的な,被害者の認知症の状況などの立証が必要でした。そして,認知症の状況などを立証する証拠は医療機関のカルテや診断書が一番ですが,症状が多彩で初期診断が困難な(上記「前頭葉型痴呆の臨床」)前頭側頭型認知症について,しかも紛争になっているようなケースで詳細なカルテや診断書を作成してくれる医療機関が多いとは思えません。そのため,証拠集めに苦労することが少なくありません。正確には,苦労するのは我々弁護士ではなく,証拠集めを依頼する弁護士と診断書作成を渋る医療機関との間で挟まれる,被害者とそのご家族です。とくに,ご家族が,被害者の方が大量の商品を購入していることに気が付けば,「こんなもの病気に決まっている,これで誰も取り合ってくれないはずがない。」と思われるでしょう。しかし,一方で弁護士からは「証拠がなければ裁判官も取り合ってくれない。」と言われ,他方で医療機関からはさしずめ「性格による可能性もあるから病気であると診断書には書けない。」とでも言われ,その間で挟まれるご家族の苦慮は察して余りあります。
 これに対して,消費者契約法における「通常の分量等」については,「消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件,並びに事業者がその締結を勧誘する際の消費者の生活の状況及びこれについての消費者の認識を総合的に考慮」するとされており(消費者庁ホームページ,主に客観的な事情が重要になるようです(「生活の状況」についても,「客観的に存在しうるものであることを要します」。)。そうすると,主観的な認知症の状況に関するカルテや診断書といった証拠がなくても,購入契約を取り消すことができるかもしれません。少なくとも,カルテや診断書の重要性は今までに比べれば落ちるのではないかと予想されます。そうなれば,証拠集めをする被害者・ご家族・弁護士にとって随分と負担が小さくなります。

 

 これから締結された過量契約には改正消費者契約法の適用があります。改正消費者契約法によって,前頭側頭型認知症に限らず,認知症の消費者の被害回復は図りやすくなると期待されます。しかし,同時に,現時点では,改正消費者契約法上の過量契約に関する裁判例はありません。ですから,依然として,今まで通りの証拠集めも必要だと思います。以下は,あくまで私個人の意見ですが,たとえば,次のような証拠集めが考えられます。もちろん,このとおりにはいかない場合もあるでしょうし,あるいは,ほかにも証拠はあるかもしれません。
①  取引内容の把握。日時,商品,代金などを調べて一覧表にまとめる。
②  預貯金などの取引履歴の把握。残高の推移や,収入・支出の推移をまとめる。
③  被害者の方の状態や,生活の様子の観察。
④  カルテや診断書。紛争になる前に集めた方が良いと思います。
 そのうえで,集めた証拠も踏まえて,弁護士の方にご相談ください(弁護士の方のお知り合いがいらっしゃらない場合には,大阪弁護士会へお越しいただければ,弁護士の紹介を受けることができます。)。

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