弁護士の仕事はいろいろありますが、典型的なものとして法律相談があります。依頼者から話を聞いて、法律的なアドバイスするわけですが、プロセスとしては大きく二つの部分に分けることができます。
一つ目は、依頼者の話を聞いて、こちらが要点を把握し、どういう点に問題があるのかを理解することです。
以前から知っている方から相談を受ける場合、その人の立場や家族構成など、ある程度の情報を知っているので、比較的問題点を把握しやすいのですが、弁護士会の法律相談などのように、初対面で話を聞く場合は問題点の把握はかなり難しい場合があります。しかも時間が限られている場合も多いとあってはなおさらです。
よくあるパターンとして、相談者が、登場人物の紹介を長々とされることがあります。これは聞かされる側にとっては結構大変で、もうちょっと端的に登場人物が何人でそれぞれどういう立場なのかを説明してもらえないかな、と思うことがあります。
もちろんそのような場合には、「結局、ご兄弟は何人いらっしゃるのですか」というようなことを質問して、こちらが理解できるペースにするよう持っていくのですが、ただ、長々と話される方の場合、話をさえぎって「あなたのおっしゃるのはこういうことですか」と質問すると、まだ話があるのに何だと怒られる方がたまにいらっしゃるので、要注意です。
また、明らかに問題が2つ以上あって、区別して考えなければいけないのに、ごっちゃにしているため分かりにくくなっていることも多く、その場合は整理してあげる必要があります。
次に、当方がある程度話のポイントが理解できたとして、今度は法律的にどういう問題があるのかについて、分かりやすく伝える必要があります。この場合に私がよく使うのはたとえ話です。
たまたま最近あった例として、当初は「サイバー犯罪」について相談があると聞いていたのですが、実際に内容を聞いてみるとメールやネットでのやりとりに関してトラブルが生じ、相手方から損害賠償を請求されたというものでした。
このようなケースは法的に見て不法行為というジャンルにあたりますが、不法行為の場合に私がよく使うのは、交通事故の例をたとえにすることです。
故意または過失があるのかとか、因果関係が必要であると言ってもなかなか理解しにくいものですが、交通事故でいえばよそ見をしたことに過失があるので責任を負うということですとか、事故に遇う前から持病があった場合、そこの部分まで損害賠償責任を負いませんよね、というようなことを話すとよく理解してもらえます。
また最近では成年後見人の話をすることも多いのですが、以外に成年後見人がどういう立場の人か理解されていないようです。
この場合は、未成年の人が契約書による買い物をする場合、親の署名と印鑑が要りますよね、それと同じでお年寄りも未成年と同じように保護してあげなければならない方がいるのです、というと大概の方に分かってもらえます。
このように、弁護士も法律相談の場において、短時間で相談者に理解してもらうべく、日夜努力しているのです。