今年最終回は、最近話題の「信託」を取り上げます。
信託とは、ごく簡単にいえば、財産の管理処分を信頼できる第三者(受託者)に託す仕組みのことです。
財産管理といえば、例えば、不動産業者に賃貸マンションの管理を任せるような場合を思い浮かべられるかと思いますが、こうしたいわゆる財産管理委託契約では、対象財産の所有権を委託者本人に残したままであるのに対し、信託では、それを受託者に移転してしまうところに大きな特色があります。
信託は信託契約や遺言等によって設定することができます。
信託契約による設定がほとんどですが、具体的には、「委託者」は、その財産を一定の目的に従って管理処分することを「受託者」に委ねて信託譲渡し、譲り受けた「受託者」はその財産(信託財産)の管理処分から生じる収益を「受益者」(委託者自身である場合を「自益信託」、委託者以外である場合を「他益信託」といいます)に交付します。
このように財産の所有権が受託者に移転するといっても、それは信託の目的を達成するために認められる形式上のことであり、信託財産は受託者のもとで受託者が保有する他の財産(固有財産)と分別管理され、例えば、委託者の債権者はもちろん、受託者の債権者も信託財産に対する強制執行等が制限されます。
また、万一、受託者が破産などした場合でも信託財産は破産財団には帰属しません(信託財産の独立性・倒産隔離機能)。
このような特徴から信託は財産の保全性が高く、高齢者や障がい者など財産管理能力が十分でない方の財産を保護するための財産管理の一つの方法として大変有用であると思われます。
最近よく耳にする「家族信託」は、まだ意思能力がはっきりしている間に、家族を受託者として設定する信託のことです。
最後になりましたが、今年1年ありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。