体に触れる行為は要注意
Q.私は会社で課長をしています。先日、課の中で一番努力してくれている部下の女性社員を慰労しようと、夕食に誘いました。
ところが、この社員が翌日、「体を触られ、食事に誘われた」として、私からセクハラを受けたと会社の総務部に訴えたのです。確かに肩に手を置いたのは事実ですが、そんなつもりはありませんでした。どうしたらいいでしょうか。また、セクハラになるかどうかの線引きってあるのですか。
A.セクハラとは、日常用語では「相手の意に反する不快な性的言動」と理解されています。一方、職場のセクハラについて定めている男女雇用機会均等法は「性的な言動への対応で労働者が不利益を受けること。または性的な言動で就業環境が害されること」と規定しています。
つまり、セクハラに該当するかどうかは、相手の意に反するものであったか、就業環境を悪化させるものであったかが判断要素になります。
ただし、職場では、相手が望んでいない不快な言動をしたとしても、「嫌です」と明確な意思表示をされないことが往々にしてあります。
人間関係を円滑にする気持ちからですが、上司と部下の関係にある場合などは特にそうです。相手に拒絶されないからといって、セクハラにならないわけではないことに注意が必要です。
肩に手を置いて食事に誘った行為をセクハラというのは過敏な反応だと思われる方もいるでしょう。
ですが、セクハラになるかどうかは、「平均的な労働者の感じ方」で判断すべきとされています。そして、肩に触れる、手を握るなどのボディータッチは人によって快・不快が分かれます。異性から体を触られることを好きかという質問に対し、女性は「いいえ」と答えた人が7割以上であったのに対し、男性は「はい」と答えた人が過半数だったというデータもあります。いくらその気がなくても、体に触れる行為は避けるべきです。
また、異性の上司と夜に2人きりで食事に行くことにも、身構えてしまう方もいるでしょう。部下を慰労してあげたいという気持ち自体は悪いものではありませんから、他の社員も誘うとか、課全体で慰労会をするなどの対応がよかったと思います。
さて、今回のケースでは、女性社員が既にセクハラ被害を会社に訴えてしまっています。会社は雇用機会均等法でセクハラ対策を義務付けられていますので、そのまま何もしないということは考えられません。あなたからも事情を聴くはずですので、そのまま何もしないということは考えられません。
あなたからも事情を聴くはずですので、そのときにきちんと説明しましょう。会社が話を聞いてくれない、または不当な処分を受けてしまったというような場合は、弁護士に相談してください。
大阪弁護士会では、労働法律相談(06・6364・1248)を実施しています。
<回答・高坂明奈弁護士(大阪弁護士会所属)>
2013年10月26日 毎日新聞大阪版朝刊掲載