「認知」を得れば差別なく可能
Q.私は一人で息子を育てているシングルマザーです。私には婚約者がいたのですが、一方的に婚約を破棄され、別れました。その後、彼の子を妊娠していることが分かり、悩んだ末に出産したのです。彼は今、別の女性と結婚し、子どもをもうけたと聞きます。
彼が亡くなった場合、息子の相続はどうなるのでしょう。やはり、彼夫婦の子とは差別されてしまうのですか。
A.まず、あなたの子どもが元婚約者に「認知」されていない場合、そもそも相続分はありません。認知してもらうか、裁判を起こして元婚約者の子と認めてもらう必要があります。
さて、認知されている場合ですが、遺言がない時などに適用される法定相続分(法律で決められている相続の割合)については、結婚相手の子と同じであり、差別はされません。実は民法の規定(900条4号ただし書き)では、結婚していない男女の子である非嫡出子(婚外子)の法定相続分は、結婚している夫婦の子(嫡出子)の2分の1と定められています。これに従わざるを得ないとすれば、あなたの子どもの相続分も半分ということになってしまいますね。
この規定は元々、「法律婚の尊重」という立法趣旨でもうけられてきました。しかし、時代の移り変わりとともに国民の結婚観や家族観も多様化が進み、諸外国も非嫡出子と嫡出子の法定相続分の差異を相次いで撤廃しています。
こうした事情を踏まえ、最高裁が今年9月、「法定相続分を区別する合理的な根拠は失われた」として、規定は違憲だと判断しました。
この決定が出たことにより、民法の規定が直ちに削除されたわけではありません。しかし、最高裁の判断には事実上の拘束力があります。
今後は、既に法律関係が確定している場合を除き、他の裁判所でも同じく違憲と判断し、遺産相続を巡る調停などでも今回の決定に従った運用をすることになると思われます。こうしたことから、今回のケースでの法定相続分は、元婚約者の結婚相手が2分の1、その子とあなたの子が同じ割合の4分の1ずつということになるでしょう。
<回答・横山竜一弁護士(大阪弁護士会所属)>
2013年11月2日 毎日新聞大阪版朝刊掲載