減額は可能、再度話し合いを
Q.離婚した元妻に娘の養育費を支払っているのですが、私が社長をしている会社の経営状態が厳しくなり、満額を払うことが難しい状況になっています。元妻に伝えると、「裁判を起こす」と言っています。減額を認めてもらうことはできないのでしょうか。
A.養育費は、子どもを養育するための金銭ですので、継続的、安定的に支払うことが求められ、これを一方的に変更することはできません。しかし、養育費を決めた時には予測できなかった事情の変更があった場合などには、変更することができます。
過去の裁判で減額が認められたケースとしては、
▽離婚した前配偶者が再婚し、子どもを養子とした場合
▽転職や病気で収入が大幅に減少した場合――があります。
他方、増額が認められたケースとしては、
▽子どもの進学に伴い教育費が増加した場合
▽15%を超えて物価が上昇した場合――などがあります。
さて、ご相談のケースですが、養育費を取り決めて間がないだとか、意図的に収入を滅らした場合を除き、収入の大幅な減少という「事情の変更」が認められますので、養育費を減額することは可能でしょう。
しかし、一方的に減額してよいわけではありません。養育費を当事者のみで決めていた場合は、再度話し合いをすることになります。
これに対して、調停や審判など裁判所を通じて決めていたり、公証人役場で決めたような場合には、養育費の減額調停を申し立て、改めて養育費を決めておく必要があります。
こうした手続きを経ずに養育費を一方的に減額して支払っていると、養育費が未払いだとして給与や預貯金を差し押さえられることになりかねませんので、注意が必要です。
〈回答・吉田英善弁護士(大阪弁護士会所属)〉
2013年10月19日 毎日新聞大阪版朝刊掲載