最寄りの消費生活センターへ
Q. 一人暮らしの母の自宅に業者が訪れ、貴金属を二束三文の値で無理やりに買い取られてしまいました。
こうした業者を規制する法律はないのですか。また、この買い取りを取り消すことはできるのでしょうか。
A.訪問業者が物品を無理やり買い取る被害は、「押し買い」と呼ばれています。
業者は一般的な買い取り価格よりもはるかに安い価格で、強引に買い取っていきます。2011年度には、消費生活センターに4000件を超える被言栢談が寄せられました。
被害者のほとんどは高齢者や女性で、被害品は金・プラチナなどの貴金属が圧倒的に多いです。
これまで、押し買いをする業者を規制する特別な法律はありませんでした。ですが、押し売り業者を規制する特定商取引法が改正され、押し買いについても業者に対する規制が導入されたのです。13年2月から施行されています。
その結果、無理やり物品を買い取られたとしても、その業者から契約書面を受け取った日を含めて8日間は、買い取りの契約をクーリングオフ(無条件キャンセル)することができるようになりました。
契約書面を渡されなかった場合や、書面の記載に不備がある場合には、8日間の期間制限なしにいつでもクーリングオフをすることが可能です。
業者の勧誘行為も規制されました。依頼もないのに自宅を訪ねて買い取ろうとしたり、威圧的に買い取ろうとする行為などは禁止されています。
ただし、例外もあります。自動車、大型家電、家具、書籍、テレホンカードなどの有価証券、CD、DVD、ゲームソフトなどの買い取りの場合には、そもそもこの法律の適用がないとされています。
また、消費者が買い取りを依頼して業者を自宅に呼んだ場合や、引っ越しの際に不要な物品を買い取ってもらう場合は、クーリングオフはできないとされていますので、注意が必要です。
もし、押し買いの被害に遭った場合には、速やかに最寄りの消費生活センターに相談してください。
〈回答・松尾善紀弁護士(大阪弁護士会)〉
2013年6月29日 毎日新聞大阪版朝刊掲載