裁判手続きせずに賃金債権行使
Q. 最近、勤務先の会社からの給料支払いが遅れることがたびたびあります。
今後、給料が未払いになるのではないかと心配です。もしそうなった場合、どう対応したらよいのでしょうか。
A.労働者は使用者に対して「賃金を支払え」と言える権利「賃金債権」を持っています。
ですから、今後、会社が賃金を支払わない事態が発生した場合、賃金債権を強制的に取り立てる手段を講じることになります。
一般に、金銭に関する権利を実現するには、裁判を経て、差し押さえた財産から配当を受け取る「民事執行」の手続きを利用する必要があります。
ですが賃金債権の場合は特別に、裁判という面倒な手続きを踏まずに済む方法が用意されています。民法308条の「雇用関係の先取特権に基づく担保権実行」です。労働者保護の観点から、ダイレクトに会社の財産を差し押さえ、未払い賃金の回収を図ることができるのです。
この手続きは、労働者が管轄の裁判所に申し立てて行います。その際、差し押さえる会社の財産を特定しなければなりません。申し立てを行う場合に備え、会社の財産を調査しておきましょう。
取引先に対する売掛金も対象になりますし、会社の預貯金ならば金融機関名だけでなく、支店名も調べておくことが必要です。
また、会社に対する担保権が存在すること、具体的には労働契約書や未払い賃金があることを証明する資料などが必要となります。
今のうちに、未払い賃金があることについて、会社に一筆書いてもらっておくべきです。
こうした手続きは、ご本人が行うことももちろん可能ですが、不安な方は弁護士に一度、ご相談ください。大阪弁護士会館では、労働法律相談(予約電話番号06・6364・1248)を実施しています。資力が一定以下の方は、無料で利用することができます。
〈回答・中島ふみ弁護士(大阪弁護士会)〉
2013年6月15日 毎日新聞大阪版朝刊掲載