日弁連が1950年(昭和25年)から毎月発行している
機関雑誌『自由と正義』なるものがあります。
弁護士にはかなり身近な雑誌なのですが,
一般の方にはどのくらい浸透しているものなのでしょうか。
なお,『自由と正義』は、どなたでも購読できるようです。
さて,この『自由と正義』の
最新号2014年VOL65No.4[4月号]に 掲載されていた
大平光代先生の記事『ひと筆~田舎暮らし』に,
とても感銘を受けましたので,
そのことをつらつらと書いています。
私が大平光代先生を知ったのは,
言わずもがなの有名な自伝書
『だから,あなたも生きぬいて』
(出版社: 講談社 (2000/2/21))です。
司法試験にトライしようとする人にとっては,
このようにして合格された方もいるのだ,と
鼓舞してくれる本です。
下記にアマゾンから一部引用します。
~内容紹介~
『十四歳の時にいじめを苦に割腹自殺を図る。
転落の人生をたどり、十六歳で暴力団組長の妻に。
現在の養父に悟され二十二歳で離婚。
司法試験に合格し、現在は弁護士 』
大平光代先生のご活躍の片鱗は,
大阪弁護士会の末席にいる私の耳にも入ります。
私にとっては,受験時代からの憧れも相俟って,
手の届かないような素晴らしい大先輩という存在でした。
もっとも,昨今は子育てで弁護士業の一線からは離れている,
ということを聞いていましたが,
実際どのような暮らしを送っておられるのかは 知りませんでした。
『自由と正義』の記事では,
司法試験合格までの壮絶な経緯や,
弁護士としての多忙な仕事ぶりの話などは,
触れられていませんでした。
まず,そこが一つ私の驚いた点です。
讃えられた過去の努力の実績を押し出すのではなく,
過去はすでに過去のものと整理しているような,
潔さを感じたのでした。 (あくまで私の解釈です)
春の山菜,秋の実り,風の音,小鳥の声…
心穏やかな田舎暮らしが娘のおかげだと語られています。
田舎に住んで,ゆっくり子育てをして,
庭での野菜作りなどをして充実した毎日を
送っているとあります。
そして,子どもが保育園に登校している時間を使って,
以前からやりたかったステンドグラスを始めたこと,
それが長じて絵本を出版したこと,
それから油絵を始めたことが語られています。
記事を読んだ時の第一印象は,
「あんなに苦労して合格した司法試験だったのに,
そして,大平先生も記事に書いているとおり ,
『自他ともに認める仕事人間』だった方が,
弁護士業と一線を画して,
このような心持ちに切り替えて, 日々を送ることが
本当に可能なのか。」というものでした。
自分に置き換えて考えると,焦り,不安,未練,
いろんな感情が衝動的に押し寄せてきそうです。
…いや,でも,それが必要なら
きっと可能なのだろうな,と それから思い直しました。
大平先生の記事から伝わってくる生き方は,
真に自分に必要な決断をすることを
鼓舞してくれるものでした。
固執するのではなく,次の環境へ移り,
そこでさらに進化していく。
輝かしくて,ステキでした!
そして,自分には無理だと思っていることがあるとしたら,
それは,自分で自分の限界を設定して
出来ないと結論付けているものだと諭されるものでした。
改めて,弁護士はいい仕事だな,と思いました。
自分の選びたいライフスタイルを
応援してくれる資格だと思いました。
重ねて,大平光代先生が記事で語っている
油絵の魅力が,実に奥深いものでした。
油絵では,ブリード現象というものに
注意をしなければならないと言いながら,
他方,この現象が「なんだか私の人生にとってもよく似ている。」と
受け容れているところが,とても興味深いものでした。
大平光代先生の記事は,次の言葉で〆られていました。
『人生につまずいた時,いつでもそこから立ち直って,
やり直すことはできます。
でもそれは過去にもどってやり直せるのではなく,
立ち直ろうとする時点からの, 新たな出発なのです。
ですから,過去を白紙に戻して,
なかったことにすることはできません。
…それを消そうとするのではなく,
すべてをひきうけた時にはじめて,
幸せだと思える日々を過ごすことができるのだと思います。』
とっても心に染み入りました。
担当している依頼者,少年,被疑者に 贈りたくなる言葉です。