軽傷なら慰謝料までは困難
Q.私の飼っている子犬が、散歩中に出合った大型犬に足をかみつかれました。今も足を引きずっている状態で、外に出るのも怖がるようになってしまいました。大型犬の飼い主はリードをつけずに散歩をさせており、向こうに貢任があると思いますが、謝罪もない状況です。ペットを傷付けられたことを理由として、損害賠償や慰謝料を求めることはできますか。
A.ワンちゃんのけが、大変でしたね。
今回の場合、大型犬の飼い主に対して、子犬の治療費や動物病院に通うための交通費などの損害賠償を求めることが可能です。リードをつけずに散歩をさせていた点で相手側の過失が認められ、子犬が傷付いたことで治療費などの損害が発生したと言えるからです。
一方、慰謝料については、裁判を起こしたとしても認められるのは難しそうです。今回はけがの程度がそれほど重くないからです。ただし、歩行困難や排尿障害のような後遺障害が残るようなら、請求できる余地があります。慰謝料の金額はそれぞれのケースで異なりますが、一生介護が必要なけがの場合で、30万円前後が一般的です。
さて、慰謝料がなかなか認められないという結論は、最愛のペットのけがに心を痛めているあなたにとって、納得がいかないかもしれませんね。これは、犬などの動物が法律上、「物」として扱われているためです。「物」に生じた損害は、財産的な賠償がされれば、所有者の精神的損害も回復されると考えられており、慰謝料までは必要ないとされています。
「ペットは物ではない」とお怒りの方もいるでしょう。確かに、最近はペットに対して家族同様の愛情を注ぐ人たちも増えています。こういった風潮の変化を受け、重いけがや死亡に限り、裁判所も慰謝料を認めるようになってきたというのが現状です。
<回答・周々木晴香弁護士(大阪弁護士会所属)>
2014年1月25日 毎日新聞大阪版朝刊掲載