<裁判において、判決が出ると自動的に判決書が送達されます。
これは、民事訴訟法255条が「判決書・・・は、当事者に送達しなければならない。」と定めているからです。
他方、訴訟上の和解が成立した場合にはどうなのでしょうか。
実は、和解の場合には民訴法255条にあたる規定がないため、法律上は当然には和解調書は送達されません。
もっとも、通常、和解が成立した場合には書記官さんが
「それでは、口頭で双方送達申請を行ったということでよろしいですね。」
、と言ってくださるので、
「はい。」
、と答えているはずです。
そうすると、調書ができ次第送達がされる、という扱いがなされています。
司法協会の「新民事訴訟法における書記官実務の研究(Ⅰ)」のP378によれば、「和解調書の送達申請は、規定がない以上、その実質は交付申請であるが、正本の交付費用については、1回目の送達申請の場合でも書く当事者ごとに1通に限り、判決正本の場合に準じて(和解の内容を当事者に了知させる意味もある。)不要とする取り扱いがされている」のだそうです。
なぜこんな当たり前のことを確認するに至ったかというと。
先日和解の場において書記官さんが
「双方口頭で送達申請を行ったということでいいですね」
といつものように確認をしたところ、
相手方から 「うちはうちの分しか申請しません!!!いるんだったらそっちでやるでしょッッ!!!」
と猛抗議を受けてしまったからなのです笑
その後私も口頭で送達申請を行ったのでことなきをえましたが、改めて条文のたてつけを確認したという次第です。
しかし、相手方に送達がされなければ(あくまで相手が被告の場合ですが)執行もできませんし(民執22条1項7号)、前述の書籍によれば「自分にのみ送達を求める場合には、まさに送達に名を借りた正本の交付申請であると理解されるので、交付手数料を要することになる」とされています。
・・・なんだか損なのではないでしょうか?
何気ないやりとりから条文を引くことは多いですが、そのたびに新たな発見があって勉強になります。
小さいことながら大事にしたいと思います。