ブログをご覧の皆様、弁護士の丹羽一裕と申します。
4月14日に、民法の改正法案が衆議院で可決されました。
おそらく、今国会で成立することになるでしょう。
では何が変わるのでしょうか。
まずは、今の民法の沿革から見てみましょう。
今の民法が施行されたのは、明治31年、今から120年ほど前のことです。
大変読みづらいものであったため、平成17年には現代語化されました。
しかし、その後も大幅な改正は行われることはありませんでした。
この間、法律の文言だけでは白黒つけられないものについて、たくさんの判例が出されることになりました。
そのため、判例を知らなければ、法律を見てもさっぱりわからないことがたくさんあります。法律の文言を読んだだけでは、法的な取扱いがどうなるか、わかりません。一般の方々にはとても分かりにくいのです。
さらに、明治時代の法律であるため、社会の変化についていくことができていない部分も多数生まれてきました。
そこで、平成20年ころから、一般市民の方々にわかりやすいものにすること、社会の変化に対応すること、を目的として、民法、特に現代では日常生活にも大きくかかわってきた「契約」などについて、改正することが検討されるようになりました。
では、どのあたりが変わるのでしょうか?
みなさまにとっても身近な言葉ですよね、まず、「保証」契約が大きく変わります。
例えば家賃の保証人などについて、責任の限度を、契約書で明確に定めなければならないようになります。これによって、想定外の責任を負うことがないようになります。
また、事業資金について保証人になった場合には、借金が大変高額なものになることも多いので、経営状態についていろいろな情報を得ることができるようになります。
ほかにもありますが、このように、保証人を守る方向に法律が変わります。
「時効」も大きく変わります。
まず「時効の中断」「時効の停止」という大変わかりにくかった言葉が、「時効の更新」「時効の完成猶予」といった比較的わかりやすい言葉に代わります。
また、多くの時効が10年であったところから、5年に短縮されます。
他方で、生命身体への不法行為(傷害事件や人身事故の損害賠償請求など)の時効期間が、3年から5年へ延長されます。被害者の救済につながることになります。
「法定利率」も変わります。
これまで年5パーセントだったものが、年3パーセントになります。
自分には関係ない、と思うのは早合点です。
例えば交通事故で後遺症を負ったとします。
後遺症のため仕事ができなくなった場合でも、損害賠償金は、一括で支払われます。
将来得ることができるはずだった給料についても一括で支払われるのです。
このため、大まかにいえば、将来の分については「年5パーセント」分が減額されてしまうのです。
この「年5パーセント」の減額が「年3パーセント」になれば、それだけ支払われる賠償金が大きくなるわけです。
ここで上げた以外にも、様々な事柄について改正がなされます。
みなさまにとっても大きな改正ですが、法律家にとっても大きな改正です。
法律家もきちんと勉強していかなくてはならないと、改めて思う次第です。