岡山県立津山高校の2年生を対象にした選択科目でワークショップが実施されることとなり,縁あって講師を務めてきました。
なぜ大阪の弁護士が岡山で?ということはさておき,同高校は創立121年の歴史と伝統があり,明治33年に落成した旧本館は,NHKの連続ドラマ「あぐり」や「カーネーション」での撮影にも使用されたそうです。
また,B’zのボーカルの稲葉さんの出身校でもあるようで,熱心なファンが訪れるとか訪れないとか。
さて,今回のワークショップでは「社会における法曹の役割・重要性について学ぶ」ことが目的で,時間は90分,一方的な講義形式ではなく,13名の参加者との間で,某教授の「白熱教室」のような活発なやりとりをしていただければとのこと。
なかなかハードルが高くプレッシャーでしたが,事前学習も実施されるとのことでしたので,下記のアンケートに答えておいてもらうことにしました。
① 裁判に関するニュースで記憶に残っていることは何ですか?
② 「司法」「裁判」「法律」「法曹」を小学3年生の児童に説明するとすれば,どのように説明しますか?
③ 法曹三者のいずれかになるとしたら,どれになりたいですか?
また,当日には模擬法廷も実施しようと目論み,簡略化した事案を題材に検察官,弁護士の立場から意見を述べ,また,裁判官の立場から判断を示すとすれば,どうするかも考えてもらうこととしました。
そうして迎えた10月8日(土),余裕をもって自宅を出発したつもりでしたが,高速バスが渋滞で延着したというハプニングもあり,慌ただしく現地へ。
心の準備もそこそこで,「どんな生徒が来るんやろうか」,「大阪の人間はみんなおもろいと期待されていたら,どうしようか」,「いや,逆に全く期待されておらず,白けた感じの方がしんどいな」等々心配しながら校舎に入ると,玄関に10数名の生徒が集まっています。
本日の受講生たちかもと思いおずおずと挨拶してみたところ,とても元気に気持ちのいい挨拶を返してくれ,一気に緊張が解けました。
そのまま会場へ移動してワークショップを開始しましたが,最初に司法試験に合格するまでの経験談や,合格してからの司法修習について話しました。
裁判官・検察官・弁護士が同じ試験を受けて,同じ修習をしていることは必ずしも広く知られていないのではないかと思ったからですが,受講生はとても関心を持ってくれたようでした。
また,弁護士に登録してからの仕事ぶり,特に裁判以外にも多岐にわたる活動ができる可能性があるという点にも興味を持ってくれたようでした。
なお,余談として話したこと,例えば,「法律事務所に勤務して給与をもらっている弁護士のことを,独立するまでの間,居候している弁護士ということで,『イソ弁』と呼んだりしています」という説明も,熱心にメモまでとってくれていました。
このように受講生がみな熱心で,きちんと反応を示してくれるため,つい調子に乗ってしまい脱線すること度々で,気が付けば60分近くが経過・・・
慌てて模擬法廷を実施することにして,自分がなりたい立場にわかれてチームを組んでもらいました。
事前に考えてもらった事案について,検察官チームから論告・求刑を,弁護人チームから弁論を行ってもらいましたが,実際の形式は伝えていませんし,どのような犯罪が成立して法定刑がどのように定められているかも伝えておらず,あくまで現時点で持っている価値観,正義感に基づいて,ただ,立場をわきまえて意見を述べてみてほしいとだけお願いしました。
そして,最後に,裁判官チームで合議してもらい,判決を言い渡してもらいましたが,やはりここでも同様です。
事前に事案の検討はしてもらいましたが,こうした模擬法廷を実施するとはアナウンスしておらず,面食らったと思いますが,みな自分が検察官,弁護人,裁判官だったらと想像しながら,立派に役割を演じてくれました。
なお,本当は,役割を変えてチームを再編して,再度模擬法廷を実施してみようとも思っていたのですが,時間配分がまずくて実施できず,ただ,受講生には違う立場だったらどうするか,また,立場をわきまえて行動するということがどういうことかを,実感してもらえたのではないかと思いました。
こうして90分はあっという間に過ぎてしまいましたが,せっかくなのでと座談会のような場を設けてくださいました。
受講生もみな残ってくれ,お弁当を食べながら気軽に質問をしてもらったり,普段感じていることを話してもらったり,将来の進路・志望についても聞かせてもらったり。
弁護士になりたい,法曹になりたいと考えているという方もおり,早ければ10年以内には同じ法曹として再会できますので,そうなれば本当に嬉しいです。
また,違う道に進む方にとっても,今回のワークショップが何らかの一助にでもなれば幸いです。
先日,受講生からのアンケートを送ってもらいましたが,改めて皆さんが真剣に取り組んでくれたのだと感動しています。
そのため,おそらく本ブログ開設以来,最長となるのではないかと思いますが,今回の記事を書かせてもらいました。