被相続人が多額の債務を残して亡くなった場合、相続人としては相続放棄の手続を執ることが考えられます。通常、相続放棄を行った場合、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」(民法939条)とされており、債務を支払う義務はさかのぼってなかったことになります。
しかし、固定資産税については、少し注意が必要です。
地方税法343条は、次のように規定しています。
1項:固定資産税は、固定資産の所有者・・・に課する。
2項:前項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者・・・として登記又は登録されている者をいう。(略)
すなわち、被相続人の死後、相続放棄までに相続登記がされ、課税処分がされてしまうと、相続放棄と課税処分のどちらが優先するのか?という問題が出てきてしまうのです。
これについて、横浜地判平成12年2月21日(判例自治205号19頁)は、代位による相続登記により登記簿上所有者とされている者に対してなされた固定資産税の賦課処分は、その後登記名義人が相続放棄をしても適法である、と判示しました。
下級審のいち裁判例ではありますが、行政は必ずこの裁判例を根拠として請求をしてきますので、知っておいて損はないかと思います。
台帳課税主義に従わないと徴税が滞ってしまうというのもわかるのですが、単独でできる相続登記、まして代位による相続登記が勝手になされてしまったときまでそれを貫くというのは相続人にとって酷だなぁという思いがぬぐえません。登記されてしまっている以上条文上難しいのでしょうが、この場合は地方税法343条2項後段の場合に含めるとかなんとか解せないものか・・・と思ったり。。
(他人任せで恐縮ですが)今後判例が出ることに期待、です。