こんにちは,大阪弁護士会の弁護士の松井圭子と申します。
私は,大阪弁護士会の司法改革検証・推進本部の弁護士制度部会に所属しています。弁護士制度部会では,弁護士自治などの弁護士制度について研究するとともに,弁護士報酬についても制度の点から勉強しています。
今回は,弁護士報酬(弁護士費用)について,少し考えてみたいと思います。
まず,弁護士費用は一般の方からすると,「高い」ようです。
確かに,一件あたりの単価は高いことは否定できません。その代わり野菜のように毎日買う必要はないですし,家電のように買い換えも必要なく,その方へのオーダーメイドで仕事をするので,全体として見ると高額か否かは決めがたいと思っています。ただ,支払う方にしてみると一度に出ていくお金が大きいので負担であることは違いありません。この点について,今は分割払いや完全成功報酬制,タイムチャージ制などで受任されている弁護士も多いようです。
また,専門家である医師・病院と比較されることがありますが,日本では保険制度がありますので,患者さんの負担は少なくて済んでおり,あまり高いという感覚はないようです。この点,弁護士費用についても,権利保護保険というのが発売されています。権利保護保険については,弁護士費用の持ち出しという問題が解消されるという点で,今後広まっていくのではないかと考えられています。権利保護保険が普及すると,一時払いの金額がなくなりますので,弁護士費用は「高い」という印象も少しはなくなるのかもしれません。
次に,弁護士費用は「わかりにくい」ようです。
「わかりにくい」にもいろいろあるかと思いますが,一般の方にとっては,何にお金を払っているのが不明確なのかもしれません。例えば,スーパーで買い物をするなど,目の前にある物に対価を払うという場面では,その物に価値があるかどうかを見極めてお金を支払うため,人はあまり抵抗を感じることがないでしょう。しかし,弁護士の提供するサービス,実際は弁護士の使う時間や知識やノウハウなどが使われているのですが,何に対価を支払っているのかが一般の方にとっては見えにくい。
少し話は変わりますが,目に見えないものはタダだと思っている方もいるようです。聞いた話ですが,個人でホームページを作成する仕事をしておられる方に,「ついでにうちのホームページも作っておいてよ」などと気軽に依頼される方がいらっしゃるそうです。もちろん頼んだ方はタダだと思っていると…。弁護士に限らず,なかなか目に見えないものにお金を払うとか,時間・知識・ノウハウにお金を払うということをご理解いただくのは難しいのかもしれません。
わかりにくさの解消方法としては,できれば正式にご依頼いただく前に,ご自身で比較をしていただくのが一番いいのではないかと考えています。ご依頼いただく内容によって弁護士費用が大きく変わりますので,ご自身の事件でどのくらいかかるのかということを知っていただくのが納得していただけるのではないかと思います。弁護士も今は「見積書」を提示するようになってきていますし,私自身,気になったら他の弁護士にも聞いてみるように薦めています。
今回は,あくまで一人の弁護士として弁護士報酬に関する雑感を述べましたが,弁護士報酬について考えるというのはとても難しいと感じています。弁護士報酬についてどのような定め方がいいのか,規定や指針などはそもそも必要かなど,議論は多岐にわたり,結論は出ていません。ご依頼いただく事件は全て異なることから,一般的に検討するのが難しい問題でもあります。弁護士制度部会では,引き続き報酬問題を含めて,弁護士制度について研究を続けていく予定です。