法的手続きの検討も視野に
Q.10年来の知人がリストラに遭い、「お金に困っている」というので30万円貸してあげました。ですが、その後、携帯電話にも出なくなり、家に行ってみると引っ越していました。転居先も分かりません。どうやって返金を求めることができるのでしょうか。
A.あなたにとっては知人に信頼を裏切られ、大変ショックなことでしょう。ですが、貸金を巡るトラブルは頻繁にみられるものです。借り主が連絡もなく突然所在不明になったとすれば、もはや自主的な返済は期待できません。法的手続きを検討することもやむを得ないかもしれません。
裁判を起こした場合、裁判所から借り主に訴状が送達される必要があるのですが、そのためにも借り主の現在の住所はできる限り調べなければなりません。
この点、弁護士などの専門家は正当な理由があれば、住民票などを取得できます。
もっとも、転居先が住民登録されていなければ、現在の所在地を突き止めることは困難です。しかし、こうした時でも「公示送達」という方法で提訴が可能です。
訴状などの書類を相手方に直接送達できない場合に、裁判所内に一定期間掲示することで送達したとみなされるのです。
ただし、裁判で勝ったとしても、みるべき財産が判明しなければ、貸金の回収が実現できません。勝訴判決を得た債権者が、債務者の財産を把握する「財産開示手続」という制度もありますが、債務者の協力がなければ実効性がないなど、いまだ不十分なところも多いです。債権者保護のためには、実効性を強化する法改正が望まれます。
いずれにせよ、所在不明ということのみで、その後の追及が不可能になるものではありませんので、弁護士にご相談ください。お金を貸す際は、将来の貸し倒れリスクを十分認識し、慎重に判断することが大切です。
〈回答・森田泰久弁護士(大阪弁護士会所属)〉
2013年10月5日 毎日新聞大阪版朝刊掲載