少し前に,有名古物商がネット上に万引き犯の顔写真を公開するかしないかが話題になりました。
このとき,いろいろな人が,様々な意見を述べていました。
その中には弁護士もおられ,
当然のことながら「法的な責任の有無」についていろいろとお話しされていました。
その中には,「全く責任を負わない。損害賠償しなくてもいい。」という意見もあれば,「刑事責任が発生する。」という意見もあり,「弁護士が言うことなのに食い違いがあるのはなぜなのだろう?」と不思議に思われた方もおられたかもしれません。
これは,損害賠償というのが民事上の責任で,刑事上の責任は,罰金や懲役といった刑事罰の問題であり,その結論が必ずしも同じにはならないために生じる食い違いと言っていいかもしれません。
今回のケースで言えば,ネット上にモザイクつきとはいえ個人を特定できる情報が流された場合,その情報を流された人が情報を流した人に損害賠償請求が出来るかという民事上の責任の問題と,情報を流した人がそのことについて処罰されるかという刑事上の責任の問題とがありました。ですが,聞く側も答える側も,その違い,区別をさほど意識せずに伝えていたため,結論が異なるように見えたかもしれません。
今回のケース,刑事上の責任としてみれば,刑法の脅迫罪などが成立する可能性が高いというのが私を含め,多くの弁護士の意見のようです。ただ,脅迫罪が成立するとしても,実際に事件として起訴されるか,刑事処分が下されるかは,別の問題です。
では,このようなケースで,私が「こんな事をやっても大丈夫か?」と聞かれたらどのようにアドバイスをするか・・・。
多分,「やめておいた方がいい。」とお答えすると思います。民事上の損害賠償を負う危険性,刑事上の処罰を受ける危険性とも,確かにそれほど大きくはないのですが,違法性のある行為ですから,「やっても大丈夫。」とはお答えしにくいですし,話題になることより法令遵守について意識が低いという風に思われることを恐れますので。ただ,私たちが出来るのは,あくまでアドバイスに過ぎませんが。
皆さんのお考えも聞かせていただきたい問題です。