1月から3月までの人は早生まれになりますが,4月1日生まれの人も早生まれなのはなぜでしょう。回答を言う前に少し無駄話をしておきますので,法律の勉強をしている人は,六法を持って来て民法140条あたりを開いて考えてから続きを読んでいただいても結構かと思います。
夏の甲子園の高校野球での最年少優勝投手記録は,唯一の1年生優勝投手である桑田真澄投手(元巨人)が持っています。しかも,彼は4月1日生まれですから,その最年少優勝記録は,ほぼ破られることがない記録です。野球選手には早生まれが少なく,4月生まれ(もちろん,1日は別です)・5月生まれが多いと言われる中,際立つ例外です。それと比べることは到底できませんが,実は私の次男も4月1日生まれです。
予定日から数日遅れて「1学年下になるのかなあ」と思っていたのに,4月1日の朝になって急に産気づいて,その日の夕方にサッと生まれて来ました。同じ頃に入院したのに難産だった別のお母さんのお子さんは翌日に生まれたので1つ下の学年で,この数時間で大差がついたわけです。
さて,答えです。民法140条は,期間の計算については「初日は不算入が原則」としています。「〇〇から7日以内に✕✕をしなければならない」という法律がある場合,例えば10月1日に〇〇があったとすると,10月1日を「0日目」と計算しますので,10月7日までに✕✕をすればよいのです。しかし,いくつかの例外があります。年齢の計算については,「年齢計算に関する法律」が「初日を算入する」と例外を定めているのです。誕生日を「1日目」として計算しますので,1年後の誕生日の1日前の日が「365日目」で,その日に1つ歳をとる計算になるのです。これは4月1日生まれの人に限ったことではなく全ての人について言えることで,実は誕生日の前日に法律上は歳をとることになります。二十歳の誕生日の前祝いだと言って酒を飲んでも法律上は実はセーフなのです。
一方,学校教育法17条は,「満6才に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから」小学校に入れなければならないと定めています。4月1日が誕生日の子は3月31日に6才になっていますので,4月1日から始まる現在の学年制の下では,いわゆる「早行き」になるということです。
退職勧奨に伴う優遇措置に関して4月1日生まれの人がいつ歳をとるのかが争われた事件があります。「60才までに退職する場合には退職金を増額する」となっている場合に,4月1日が61才の誕生日である人が3月31日に退職して,「自分も優遇措置を受けることができる」と主張したのです。しかし,最高裁判所は,「4月1日が誕生日の人は3月31日に歳をとる」と判断して,優遇措置を受けることはできないと結論付けました(最判昭和54年4月19日判時931号56頁)。