6月20日は、「世界難民の日」でした。国連の機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、「世界難民の日」は、もともと「OAU(アフリカ統一機構)難民条約の発効を記念する「アフリカ難民の日」(Africa Refugee Day)でした。難民の保護と援助に対する世界的な関心を高め、UNHCRをはじめとする国連機関やNGO(非政府組織)による活動に理解と支援を深める日にするため、「世界難民の日」として制定されたそうです。
UNHCR駐日事務所URL参照https://www.unhcr.org/jp/wrd
さて、難民という言葉を聞くと、多くの方は紛争国の難民キャンプに避難している人たちをイメージするのではないでしょうか。日本とは縁のない問題と感じる方も少なくないのではないでしょうか。実は、日本も国際難民条約に批准しており、難民を保護する義務を負っている国であること、そして、現に日本にも庇護を求めてくる難民がいるということをご存知でしょうか?
難民条約第1条で、難民とは、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けられない者またはそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」と定義されています。
2018年の日本における難民認定申請数は10,493人で、審査請求数は9,021人です。申請数は1万人を超えているのです。そして、難民認定手続の結果、日本での在留を認めた外国人は82人で、その内訳は、難民と認定した外国人が42人、難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人が40人です。つまり、難民認定した割合はわずか0.4%です。これは、他の難民条約批准国と比較しても、極めて低い水準です。このような低い水準にとどまる要因として、日本の難民認定手続における難民立証基準が厳しいことや、立証責任を申請者本人に負わせていること等が、国内外のNGOから指摘されています。そのため、現行の難民認定手続の制度においては、弁護士が代理人となって難民申請手続を行う必要性が高いです。
2019年4月より、日本の難民認定手続を行っている出入国管理局(「入管」ないし「イミグレーション」と呼ばれることが多い。)は、出入国在留管理庁となり、より多くの外国人労働者を受け入れようという方針に舵を切る法律も施行されました。しかし、「世界難民の日」の直後の6月24日、入管の収容施設内で、収容されている外国人が死亡するといった痛ましい事件が起こりました(新聞等で報道されました。)。この事件はまだ調査中のようですが、この事件に限らず、近年、入管による人権侵害が国内外から問題視されています。そもそも、在留外国人の問題は決して新しい問題ではありません。国際的にも批判されている技能実習制度が今の制度に近い形で誕生したのは約30年前の1990年で、それ以前からいわゆるサンフランシスコ平和条約(1952年発効)に基づいて日本国籍を離脱させられた人々(韓国・朝鮮人など)の人権問題がありました。
このように難民の問題をはじめとした「外国人の人権問題」に対し、日本という国がどのような姿勢を取るのかが問われているのではないでしょうか。
いま近くにいる人の人権問題です。基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする弁護士(弁護士法1条1項)としては、日本の難民・外国人の受入れ方や在留外国人に対する処遇について、人権を守り、人道的配慮を重視した適切な措置がされるよう、時には法的措置も検討しながら入管等の行政を監視することが重要だと思います。
そして、より強く思うのは、日本社会の皆さんに日本の難民問題や在留外国人の問題について私たちの社会の問題として関心を持ってもらいたいということです。「外国人の人権問題」などの人権問題、社会問題に関する取組みは、社会の皆さんの関心や理解があってはじめてより有意義な取組みへと発展するからです。NGO等の支援団体がさまざまな情報を発信していますので、ぜひ一度目を向けてみてはいかがでしょうか。