奈良・般若寺の近くに奈良少年刑務所(平成28年度に廃止なので、正確には元少年刑務所)があります。
この建物は、不平等条約の撤廃をめざした明治政府が、国際水準の監獄を作り近代化を進めることを目的として建築したもので、ハビランド方式という、中央監視所から放射状に広がる5棟の舎房が一望できるスタイルのものです。定員700名弱。
表門と庁舎は、明治時代に築造された赤煉瓦で、最近まで実際に使用されていた名建築として著名です。
今後はホテルに生まれ変わる計画のようで、11月下旬の連休中、最後の一般公開として、同地で「奈良 赤レンガ フェスティバル」が開催されました。連日大賑わいのようで、私が行った日も若い女性グループやカップルを中心に大勢の見学者がいました。
プロジェクションマッピングあり、グッズの販売あり、驚いたのは、1時間1000円を払えば、特別シートをもらって舎房の部屋の中で、1時間飲み食いできる企画もあり、ビールとつまみで盛り上がっているグループもありました。
おそらく多くの方にとっては、監獄だの刑務所だのは、非日常の世界であり、どんなところか興味一杯なんでしようね。わが同伴者も、「へー、へー、どんな人がここに入ってたんやろ」と言いながら、熱心にきょろきょろ見回していました。
隣にいたお母さんが同伴の子どもに「悪いことしたら、ここに入れられるのよ」と説明していました。お母さん、100%間違ってはいませんが、正しくもありません。奈良少は、少年刑務所とはいえ、比較的若年で犯罪傾向が進んでいない成人も多く収容されており、更生のための職業訓練に力を入れていたと聞いています。ここは、道を間違った人がやり直すための更生の場、再生の場でもあるのです。刑罰は応報のためだけでなく、特別予防の意味もある、などと刑事政策で学んだ言葉を思い出していました。
しかし、監獄の近代化を目指して作られたとはいえ、規律違反者・反抗的人物の懲罰房である重屛禁室(狭くて真っ暗)や精神病者が暴れると入れられた隔離病舎等々、人権侵害極まりないところも残っていました(戦後は使用していないという説明)。
弁護士的には、現在の刑務所にも、まだまだ多くの問題点があることは日々感じており、人権侵害救済申立てがあれば、調査をし、是正を求める活動をしています。今後も、問題がないか注視していくことが大事だなと実感しました。
ところで、今、カルロスゴーン元日産会長が金商法違反で逮捕、勾留され、諸外国から、取調べに弁護人の立会権の無いこと等々密室取調べの後進性が指摘されています。
11月30日午前9時半から、近畿弁護士会連合会人権擁護大会では、弁護士の取り調べへの立会権をテーマにシンポジウムが開かれます。国際的な逆風が吹く前に、国内のわれわれの手で、冤罪の温床である密室取調べの弊害を指摘し改善への活動をしていくことが必要です。
そんなことを考えながら、庁舎の外に出ると、綺麗な赤レンガの表門の上に、まあるいお月様がぽっかりと輝いていました。
どんなホテルができるのでしょうね。