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Channel: 弁護士の放課後 ほな行こか~(^o^)丿
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民泊の光と影

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■最近民泊が話題として随分持ち上げられており,メディアで目にする機会も多くなりました。AirBnBという民泊仲介サイトが日本でも認知されてきたことも一因でしょうか。

 

■「民泊」とは法律上の用語ではありません。もともとは民家に泊まること全般を指すことばです。しかし,最近よく話題になる民泊は,自分の所有物件または賃借物件に,不特定多数の第三者を宿泊させて宿泊料を得る行為のことです。普通に賃貸するより単価が高いのですが,これまでは宿泊客の募集が難しく,稼働率を上げにくいのが難点でした。しかし,AirBnBをはじめとする民泊仲介サイトの台頭と,民泊そのものが認知されてきたこと,外国人観光客の増加により宿泊施設が慢性的に不足していること等の要因から,最近は稼働率を上げることが容易になり,大きな利益を上げることが出来るようになったのです(ちなみに,民泊経営者に言わせれば,ここ半年ほどで民泊参入者が急増し,一番稼げた時期の峠は越えてしまっているそうです)。

 

■民泊のプラス面は以下の様な項目が挙げられます。
(1)宿泊施設不足対策
 近年の外国人観光客の急増と東京オリンピック特需で,今後宿泊施設が不足することは間違い有りません。一方,東京オリンピック特需は2020年までで,その後需要は減少しますから,ホテルを乱立させると、オリンピック後にホテルが倒産するおそれがあり,安易にホテルを増やすのは得策ではないのです。
(2)民泊ならではの宿泊体験
 AirBnBのキャッチフレーズは「現地のホストのお家に宿泊して、191カ国以上で暮らすように旅しよう」です。日常生活感のある宿泊施設を喜ぶ外国人観光客は多いはずです。また,ホームステイ型民泊というのもあります。民泊経営者が同じ建物内や敷地内に居住しており,手料理などでもてなすのです。昔あった「田舎に泊まろう」というテレビ番組みたいですね。
(3)空き家の有効活用
 近年,住宅の供給過剰と人口減少で空き家が急増しています。管理されない空き家は朽ちていくし売れません。マンションは所有しているだけで毎月管理費と修繕積立金の支払い義務が発生しますので,空き家で置いておくとお荷物でしかないのです。もし民泊施設として貸し出せれば,管理費と修繕積立金を支払うことができ,管理組合に迷惑を掛けることもありません。
(4)不動産市場の活性化
 最近,民泊営業目的での不動産購入が増加しているそうです。海外資本(特に中国人富裕層)も流入してきており,民泊には不動産市場を活性化させる機能もあるといえます。

 

■一方,民泊のマイナス面は以下の様な項目が挙げられます。
(1)近隣との摩擦
 騒音、共用部でのゴミのポイ捨て、宿泊客との生活習慣の違い、旅行客であるが故の活動時間帯のズレ、入居者が毎日代わる(旅の恥はかきすて)などの要因で,近隣との摩擦が懸念されます。マンションの一室が民泊に供される場合はなおのことです。現に,最近このような法律相談が増えています。
(2)犯罪の舞台になりうる
 殺人・傷害・薬物使用,盗撮等。
(3)セキュリティの弱体化
 宿泊客がエントランスの暗証番号を知ったり,日替わりの宿泊客がエントランスの鍵を持つことにより,共用部のセキュリティはないに等しくなります。
(4)治安の悪化
(5)他の住民の管理費にフリーライド
 大量のゴミ捨てや不特定多数人による共用部の利用が行われると,他の住民の監理費にフリーライドしているのではないかとみられ,住民感情が悪化していきます。

 

このように,民泊には良い面と悪い面があります。

 

■この民泊という行為,原則として旅館業法違反です。適法に行うためには,旅館業法上の許可を取るか(簡易宿所というカテゴリーで許可を取ることが多い),国家戦略特別区域法と所謂民泊条例に基づき自治体の認定を受けるかのいずれかを行う必要があります。大阪府は既に条例が施行されており,大阪市も条例は制定済みで,現在施行待ちです。しかし,これらの許可・認定はそれなりにハードルが高く,現実には多くの民泊施設が違法に営業しているのが実態です。
 この違法状態はこれまで黙認されてきましたが,最近は旅館業法違反として京都や大阪でも検挙例が出てきました。また,大阪では民泊行為差止の仮処分決定が出た例もあります。これらのニュースが流れると,AirBnBの登録件数の伸びが鈍るという興味深いデータもあります。

 

■ビジネスチャンスになるのは当然民泊推進側です。自分でも民泊をやってみたい,と思われる方は,ネットで検索すれば,指南のHPが沢山でてきますので,そちらをご覧ください。
 私が懸念しているのは,民泊のために良好な住環境が破壊されることです。特にマンションでは,たった一室が民泊サービスを行うことにより,マンション全体の住環境が影響を受けることになります。
 身を守るために,マンション管理規約で民泊の明示的禁止を規定すべきです。

 

■マンション管理規約の改正
 マンション標準管理規約のままでは民泊を禁止できないのでしょうか。
 マンション標準管理規約の第12条では,「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」と規定されています。この「住宅」の中に民泊用途が含まれるのかが問題となります。
 これについて,石井啓一国土交通大臣は,民泊を実施するためには第12条の変更が必要」と述べたのですが,後に撤回。その理由は,国家戦略特区ワーキンググループの有識者が,第12条の変更は不要だと見解を表明したからです。現在,政府の公定解釈は出ていない状況です。
 有識者曰く,民泊促進の邪魔をするなということでしょう。法律家の目から見て,国家戦略特区ワーキンググループの見解にはかなり無理があり,民泊実施のためには第12条の変更が必要だと考えますが,念のため,明示で禁止しておくに超したことはありません。
 管理規約の変更のためには,管理組合の集会の特別決議(組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上の議決)を経る必要があります。こちらもハードルが高いため,しっかり話し合い,合意形成を行うことが必要です。しっかり根回しして,一発で決議を通してください。管理会社によっては,すでに管理規約の変更を提案し,実際に変更が行われている管理組合も多いそうです。
 また,管理組合が民泊を容認することにしたとしても,民泊のルールは管理組合で作っておくべきです。ゴミは民泊営業者が独自に処分することを求めたり,民泊営業者に対しては管理費の割り増しや協力金の負担等をもとめるなども考えられるでしょう。

 

■旅館業法や民泊条例も今後は規制緩和の方向と聞いています。また,来年には,民泊新法が出来る予定です。新法では,部屋を宿泊施設としてではなく,住宅として貸し出すスキームを取っており,許可を取るためのハードルは大幅に下がると予想されます。新法が施行されてから対策していては遅い可能性があります。
 民泊にはプラス面とマイナス面があることを理解した上で,自分のマンションでの民泊可否をどうすべきか,管理組合でよく話し合い,早期に管理規約の改正を行うことをお勧めします。


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