大阪弁護士会広報室の加藤慶子です。
当広報室は,定期的に司法記者クラブとの交流の場を持っており,
毎回著名な弁護士のゲストを記者と広報室とで囲む「居酒屋広報室」や
弁護士会からの広報関係を伝える「司法記者クラブとの昼食会」,
昨今話題の法律改正・社会問題について
短時間でその途のプロフェッショナルの弁護士から
お得に学べる勉強会「なるほど広報室」などを開催しています。
前回の第2回「なるほど広報室」では,
鈴木一郎弁護士を講師として,「刑事訴訟法大改正」を学びました。
前回の記事はこちら
第3回目のテーマは,「再審のイロハ」と題し,
刑事訴訟での再審制度について勉強しました。
講師は,後藤貞人弁護士でした。
再審は,弁護士ですら実はほとんど馴染みがないところで,
記者にとっても情報はそれほど多くはない分野だと思われたこともあり,
この途のプロフェッショナルである後藤貞人弁護士から
再審制度を体系的に学んでもらおうという企画でした。
再審といえば,先週金曜日(10月23日)に,
いわゆる「東住吉事件」の再審開始決定(即時抗告棄却決定)という
ビッグニュースが流れたばかりです。
なお,「なるほど広報室」の開催された日の午後2時が
「東住吉事件」の2名の刑の執行停止日時となっており,
大阪で記者会見が実施されるということで,
司法記者の方々は慌ただしい時間の合間をぬってのご出席でした。
後藤貞人弁護士の講義は,再審制度の基本理念が,
法的安定性を破る実体的真実が発見された時の
「無辜の救済」という点にあることから始まりました。
審理方式が,請求審と再審公判の2段階構造となっていること,
ただ,再審についての条文はほとんどないこと,
請求審の判断が再審公判を拘束するか,などの解説がありました。
また,再審請求の理由(刑事訴訟法435条)とされることが最も多い
435条第6号の解説がありました。
新規性の要件「新たに発見した」とは,
誰にとって新規か,他の証拠と併せて新規といえるか,
という論点についての説明があり,
また,「明らかな証拠」という明白性の判断基準について
解説がありました。
そして,後藤貞人弁護士が,
どのようにして再審請求に向けて新たな証拠集めをしているのか,
具体的実践の話がありました。
後藤貞人弁護士は,いろんな人に会い,
遠方にも足を運んで関係者に話をきき,
それを反訳して提出するという作業を積み重ね,
証拠造りを積み重ねて,再審請求に至るそうです。
「東住吉事件」では,弁護団が,
大阪弁護士会や日弁連の援助を受けながら膨大な費用と時間をかけ,
実際に家を建て,現場を忠実に再現し,火を着けるという実験を行っています。
再審請求の気合と根性を感じます。
後藤貞人弁護士からは,その他にも,
最近相次いだ再審事件の話に関連して,
裁判所や検察官の職業倫理について話が及んだり,
被告人には自分が無実であってもきちんと自分を語れない,
説明できない人が多いことを肝に銘じておくこと等の
「刑事弁護のイロハ」の話も聞けました。
私にとっては,一言一句胸に刻みたくなるほど,ありがたいお話でした。
後藤貞人弁護士,本当にありがとうございました!!