検索エンジンのGoogleには,入力途中に検索ワード候補を自動表示する「サジェスト機能」があります。例えば,「ホリエモン」と入力すると,「ホリエモン ブログ 獄中」など,数組の検索ワード候補が表示され,クリックすると,その検索ワードによる検索結果が表示されます。
この機能に関し,ある個人が米国Google社を訴えていた事件の判決が,4月15日に出ました。原告は,自分の氏名をGoogleの検索ウインドウに入力すると,身に覚えのない犯罪行為への関与を連想させる単語が表示されることから,名誉棄損が成立するとして,表示の差止めと損害賠償を求めていたところ,東京地裁は,Google社に対し,差止めと慰謝料30万円の支払いを命じたそうです。
確かに,「大江弁護士」と検索ウインドウに入力したときに「大江弁護士 業務上横領」という検索ワード候補が表示されたら,普通の人は,大江弁護士が業務上横領をしたか,その嫌疑がかけられていると思うでしょうから,そのような検索ワード候補の表示自体が,大江弁護士の社会的評価を低下させるといえるように思います。
しかし,本来,検索ワード候補としての「大江弁護士 業務上横領」が意味するのは,「『大江弁護士』と『業務上横領』という2つのキーワードに関連するページを探して下さい」という,検索エンジンに対する指令のはずであり,Google社が「大江弁護士が業務上横領をした」と言っているわけではないのに,ユーザーの勝手な解釈により大江弁護士の社会的評価が低下したことの責任をGoogle社にとらせようというのは,どこかおかしいような気もします。
そもそも今回の判決は,検索ワード候補の表示自体が名誉棄損にあたるといっているのではなく,表示された検索結果の中に,名誉を棄損する内容のコンテンツがあり,そのようなコンテンツへのアクセスを容易にしたことまでを含めて,名誉棄損が成立すると言っているのかもしれません。このあたりは,判決文を読んでみないと分かりませんが,名誉を棄損する内容のコンテンツを自ら発信しているわけではなく,様々なコンテンツへの道案内をしているにすぎないGoogle社のサービスを違法としてしまうことには,違和感を覚えます。今後の事件の進行に注目していきたいと思います。