2月10日、「商品先物取引法施行規則の一部改定による不招請勧誘禁止の緩和に反対する会長声明」を発表しました。
【商品先物取引法施行規則の一部改定による不招請勧誘禁止の緩和に反対する会長声明】
農林水産省及び経済産業省は、2015年(平成27年)1月23日、商品先物取引における不招請勧誘禁止規定を緩和する内容の「商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令」を定めた。
当会は、2014年(平成26年)4月21日付意見書にて、同月5日付けで同省らから公表及び意見募集された商品先物取引法施行規則等の改正案につい て、当該改正案が個人顧客に対する不招請勧誘を実質的に解禁するものであり法律が委任する趣旨を逸脱するものであること、不招請勧誘の禁止により先物取引 による被害が激減したが、それでもなお、個人顧客に対し、金の現物取引や損失限定取引を勧誘して顧客との接点を持つや、すぐさま通常の先物取引を勧誘し、 多額の損失を与える被害が数多く発生していることなどから反対の意見を表明した。
本省令は、当初の公表案をわずかに修正し、ハイリスク取引経験者以外に不招請勧誘が可能となる顧客の年齢を65歳未満とし、新たに年収が800万円以上又は金融資産の合計額が2000万円以上とする資産要件を加えるなどの内容となっている。
しかし、年齢が65歳未満であることや一定額以上の年収や資産を有することと、商品先物取引というハイリスクな取引の危険性を理解できることとの関連性 は低く、これらの修正によって当会が上記意見書にて反対した理由が解消されるものではなく、それどころか顧客が資産を有するが故に被害額が増大する結果を 招きかねない。さらには、当会が指摘した当該業者以外の業者との取引経験を有する者について不招請勧誘を認めることの問題点は何ら修正されていない。
何より、これらの要件を満たすことの確認は勧誘行為の一環としてなされることから、要件を満たさない者に対して不招請勧誘が開始されることを防ぐことは 事実上不可能となる。商品先物取引法第214条第9号が不招請勧誘を原則として禁止したのは、商品先物取引被害の多くが不招請勧誘をきっかけとして引き起 こされたとの立法事実に基づくものであり、このことは不招請勧誘禁止規定が定められた後に商品先物取引による被害が激減したことからも明らかである。この ような立法事実が解消されていないにもかかわらず、本省令はすべての顧客に対して不招請勧誘を事実上解禁するものであり、到底容認することはできない。
昨年4月の意見募集に対しては、当会のみならず、日本弁護士連合会、近畿弁護士会連合会、その他多くの弁護士会や弁護士会連合会、消費者団体から反対意見が提出されているが、今回の改正は、これらの多くの国民の意見を蔑ろにするものといえる。
よって、当会は、農林水産省及び経済産業省がかかる立法経緯及び被害実体を軽視し、商品先物取引の不招請勧誘を大幅に解禁する本省令を定めたことに強く抗議するとともに、本省令を施行することなく廃止することを強く求めるものである。
2015年(平成27年)2月10日
大阪弁護士会
会長 石 田 法 子