大阪弁護士会は、2014年11月6日、「第三者の関わる生殖医療技術の利用に関する法制化についての意見書」を発表しました。
【本意見書の提言】
1 第三者の関わる生殖医療技術を利用するにあたっては,下記の視点によらなければならない。
①生殖医療技術の利用をするに際しては,それにより生まれた子どもの権利・利益を中心かつ最優先に考え,その視点から許容範囲や許容要件,子どもの権利利益を確保し支援する諸制度を定め,早急に法制化をすべきである。
②生殖医療技術の利用は,極めて慎重な判断と手続きの下になされるべきであり,これに加えて家庭裁判所の承認を要件とすべきである。
③生殖医療技術を利用する場合の,精子・卵子の提供者,親,生まれた子どもなど,関係者に対する長期的かつ多面的な支援体制が整えられるべきである。
④生殖医療技術の利用の是非も含め,不断の検証を継続すべきである。
⑤第三者の関わる生殖医療技術の濫用の防止のため,精子・卵子の提供及びあっせんは無償でなされるべきである
2 第三者の関わる生殖医療技術は,法律婚及び事実婚の夫婦が第三者による精子提供・卵子提供を利用する場合のみを許容すべきであって,胚提供,死後生殖,代理懐胎,未婚の単身の男女への提供は全面的に禁止すべきである。
3 分娩をした者を母とし,精子提供に同意した利用者を父とすべきであって,その場合提供者との間では親子関係は生じないとすべきである。
4 生殖医療技術によって生まれた子どもの出自を知る権利を法制化すべきである。その際かかる権利の前提として第三者による精子提供・卵子提供によって生 まれたことの告知を受ける機会が担保されるべきである。出自を知る権利に必要な情報が担保されるべきであるとともに,告知や出自を知る権利の行使を支援す る体制を法制化すべきである。
5 本意見書で許容する第三者による精子・卵子の提供時には,利用者に対しては,①医師による説明を経たインフォームド・コンセント,②心理面のカウンセ リング,③法律専門家等からの法律関係に関する説明,④第三者の関わる生殖医療技術を利用することの利用者夫婦の書面による同意,⑤家庭裁判所の承認を要 するとすべきである。
また,提供者についても,①提供による自己の配偶者や実子に対する影響,出生した子どもの出自を知る権利,提供における身体的侵襲・副作用等の説明を受けたうえでの,②第三者提供することに対する書面による同意を要するとすべきである。
6 第三者の関わる生殖医療技術により,子どもが出生した後は,①子ども及び利用者たる両親に対して告知の事前・事後に支援すること,②子どもに対して出 自を知る権利の行使の事前・事後に支援すること,及び子どもの出自を知る権利の行使に際し利用者たる両親に対して支援すること,③子どもが出自を知る権利 を行使した場合の提供者に対する支援や調整をすること,並びに④これらの支援のための総合的支援体制を構築することが必要である。
7 組織関係として,①第三者の関わる生殖医療技術は,一定の基準を充足した認可をうけた医療施設でのみ実施できるとすべきである。②第三者提供における 提供者等の情報は,公的管理機関を設立し,一括して無期限に管理すべきである。③第三者の関わる生殖医療技術の利用にあたり,第三者提供から子どもの出生 を経て,告知や出自を知る権利の行使にわたり,利用者,子ども,提供者を継続的に支援する公的支援機関を設置すべきである。④精子・卵子の提供者のあっせ んをする場合には,人身売買などを避けるため,公的機関が提供者の情報を管理し,あっせんすべきである。
8 第三者の関わる生殖医療技術やそれを利用して生まれた子どもを広く受け入れる社会の形成のために,国や地方公共団体その他の公共団体が啓発活動に取り組むべきである。
9 第三者の関わる生殖医療技術の法制化にあわせて,周辺領域である養子法(特に特別養子縁組)についても,養子への真実告知等を支援する公的機関の設置等養子法の改正も検討すべきである。
全文は大阪弁護士会HPをご覧ください。