先日,「NPO法人あおもりIT活用サポートセンター」という法人からお招きを受け,青森県弘前市で著作権法に関する講演をさせて頂く機会に恵まれました。
講演のテーマは,「電子書籍と著作権~基礎から実務上の注意点まで~」というもので,座学で学んだあと,参加者が実際に「りんごの教科書」という電子書籍をその場で作ってみる,というワークショップが開催されました。この「りんごの教科書」というのは,青森の名産品であるりんごに関する知識を,子どもたちに学んでもらうための教材,というコンセプトです。私も,参加者に交じって電子書籍を作る作業を行ったのですが,
①インターネット上のホームページで見つけた,りんごの生産量などのデータを使用する場合,ホームページ作成者の許可が必要か,
②りんごの原産国や,青森でりんごが栽培されるようになった経緯などを本で調べたが,出典を明記する必要があるか,
③りんごの皮を超高速で剥く様子を撮影した面白い動画をYoutubeで見つけたが,電子書籍の中に,この動画に対するリンクを貼ってもOKか,
などの疑問が次々に飛び出し,なるほど,電子書籍を作成する上で,著作権法に関する知識は確かに必要だなあ,ということを,講師自身が実感させられました。
ちなみに,上の質問に対する回答は,次のようになります。
①データ自体は客観的事実であり,著作物ではないので許可は不要。ただし,グラフや図表は,無断で使うと著作権侵害又は不法行為になる場合があるので,データを元に自分で作成するのが無難。
②著作権法で保護されるのは,「アイデア」ではなく,創作性のある表現なので,例えば,「リンゴの原産国は,トルキスタン,コーカサス山脈,天山山脈といわれている。」という知識(つまりアイデア)自体は,保護の対象にならず,出典を明記する必要も特にない。
③リンクを貼ることは,著作物の所在を示しているだけで,複製や公衆送信にはあたらないので,著作権侵害にはならない。ただし,リンク先のサイトにアップロードされている動画が,テレビ番組を録画したものであるなど,著作権者の許可を得ていないことが明らかな場合は,リンクを貼る行為も違法となる可能性がある。
講演を乗り切り,ワークショップも終わったあとは,美味しいお酒と料理を頂き,翌日は弘前城を観光したり,りんご公園で「シードル早飲&ガレット早焼早食い大会」に参加するなど(飛行機の時間が迫っていたので,私が勝手に急いでいただけですが),短いながらも楽しい青森出張でした。主催団体の皆さん,参加者の皆さんにこの場を借りて御礼申し上げます。