今月13日に,「一部執行猶予制度」の創設を盛り込んだ
改正刑法などが衆院本会議で全会一致で可決,
成立しました。
3年以下の懲役・禁錮の判決の中で,刑の一部の執行を
1年から5年の範囲で猶予するものです。
たとえば「懲役2年,うち6カ月を2年間の執行猶予」
とする場合,刑務所を1年半で出所した後,
社会内で2年間再び罪を犯さずに過ごせば,
猶予された6か月について
刑の言い渡しがなかったことになり,
刑務所に収容されないこととなるようです。
法務省HP内の「法制審議会の答申の概要」
から引用しています。
これまで,刑期の途中で仮出所出来る人はいましたが,
それは身元引受人がいる場合のみでした。
身元引受人がいない人については,満期出所。
満期出所の人に対しては,
国が援助・監督する権限がなかったことから,
適切な福祉の支援につなげたあとの
継続的な関わりが難しく,
犯罪の抑止力もないまま,刑務所の門外に
出されてしまう,という状況でした。
なので,天涯孤独な人でも,社会内処遇を受けながら
福祉の支援につながる新制度に期待しています。
「薬物依存者に処罰ではなく希望を」という観点からも,
リハビリテーションや治療につながる新制度に
期待をしています。
加えて,私が積極的な活用を望んでいるのは,
保護観察の特別遵守事項の類型に加わった,
「社会貢献活動」です。
更生保護施設,保護司,更生保護女性会,BBS会員,
協力雇用主といった更生保護を支える人たちに
期待される役割はもっと高まりますし,
そのための力をつけていく必要があります。
また,国は更生保護の分野にもっと予算をつけて,
支援層を強化するべきだと思っています。
海外をみると,もっと多様な刑の種類を
用意している国もあります。
たとえば,ある国の社会内受刑の様子をご紹介します。
受刑者は,身体(手首か足首)にセンサーを発信する
ベルトのようなものをつけ,
自宅あるいは一定区域内から
出ないよう規制・監視を受けます。
さらには夜間の外出を禁止される場合もあります。
在宅確認は,毎日固定電話に電話することで行い,
この確認作業は,民間に委託される場合があります。
音声分析して,録音テープであるか否かも
判断できるようになっています。
他にも,社会的奉仕活動を年間○○時間やることを,
懲役として言い渡すことができる国もあります。
特別遵守事項となるよりも義務としての性格が強くなり,
より効果があげられるのではないかと思います。
これらは,刑務所が飽和状態になることの反作用として
取り入れられた刑の種類という側面もあるようですが,
それまでの社会生活を一定程度維持しながら
更正を図る方法として,
効果も期待できる側面があると思っています。
更生と再犯防止の観点からすれば,
刑の執行のあり方は
もっと柔軟であっていいと思っています。
今後も議論と改革が続けられていくべきだと思います。